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ほほえむルリに、コータが「なんでだよ」とチョップをかます。
「それよかさあ、聞いてルリちゃん。
壱ちゃんったら、もう好きな子、見つけたんだとさ」
「うっそ。イヤーン。初めてじゃない?」
「誰なんだよう。教えて教えて」
コータが、ふざけて俺の肩に頭を乗っけてきた。
「いや、ちょっと待てって。まだ好きとかいうわけじゃあ……」
俺は、コータの頭を押しのけながら言った。
でもたぶん、今言わなくても明日にはバレる。
こいつはカンだけはいいのだ。
俺は仕方なく「隣の席の……」とゴニョゴニョ答える。
「ああ、上原純恋さんかあ。ウン。けっこう可愛いよね」
コータが腕を組んでうなずいた。
スミレさんというのか。名前も可憐だ。
「にしても壱ちゃんって、ああいうぶりっ子っぽいのが好きなんだねえ。ちょっと意外」
カチーン。
「ぶりっ子ってなんだよ。
スミレさんは、あれだよ、苔いいねって言ってくれたんだよ」
ルリはクリクリの目をまるっこく見開いて
「そうなの? イヤーン」
俺のケツにカバンをぶつけた。
「痛ってえ」
「あ、ホラ電車来たよ」
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