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幼なじみ
いつもと同じ朝が来て、俺は学校に行く。
ルリに会うのが気まずい……。どんな顔して会ったらいいんだ。
「おはよう壱ちゃん。今日もユリアちゃんに似て美人だねえ」
コータが、相変わらずチャラい挨拶をしてくる。
「ユリアちゃんってだあれ?」
俺の隣に座ったスミレさんが首をかしげた。
「壱ちゃんのお姉さん。俺が片思いしてる人」
コータが答えると、スミレさんが「きゃあっ」とはしゃいだ声をあげた。
「ほんとに? コータくんってノーマルなんだ?」
「え。アブノーマルかと思ってました?」
「あたしのなかでは、太壱くんとデキてることになってたよ!」
おいおい……。
スミレさんは、ポンッと手のひらをたたいて言った。
「あ、分かった。もしかして体育祭で一緒にフォークダンスしてた人だよね?」
「そう。スミレちゃんよく見てるねえ」
女ってこういう話好きだよなあ。
俺は、カバンからノートを出しつつ、なんとなくふたりの会話を聞いていた。
「コータくんは、告白しないの?」
「してるよ、何回も。だけど本気にされてないの」
「えー、なんで?」
「まあ、ユリアちゃんは幼なじみだし……。多分知りすぎちゃってんだよね、お互いのこと」
俺は、ノートを開く手を止めた。
俺とルリだってそうだ。
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