幼なじみ

4/6
前へ
/66ページ
次へ
サアサアと雨の音が聞こえてくる。 テレビでは、梅雨入りを宣言していた。 六月なかばの日曜日。 俺とコータは、ウチの台所のテーブルで、絹さやのスジ取りをしていた。 ぷちっとヘタのところを折り取って、つうーっとスジを取っていく。 クルリとまるまったスジは新聞紙の上へ。 豆のほうは、ザルの中へ。 青臭い匂いが、台所に広がっていく。 「なあ、壱ちゃん」 「んあー?」 「ルリちゃんと何かあったっしょ」 「ぶあっ」 俺は、ザルの中の豆をぶちまけた。 「シマッタくうーん」 コータが、床に落ちた豆をひょいひょい拾う。 俺も豆に手を伸ばすと、テーブルの下で、笑った目をしたコータと目が合った。 「襲ったの?」 聞かれて、俺はまた豆を取り落とした。 「襲ってねーよ!」 「そうなんだあ。じゃあチューか……」 「してねえし!」 「してないの! じゃあなんなんだよ!」 「なんでキレてんだよ……」 コータが、急に真面目な顔になって言った。 「なんでって? 分かんないの?  そんなの、俺にとってもルリちゃん大事だからに決まってるじゃん」 俺は言葉に詰まってしまった。 そ、それはそうだよな……。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加