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昼飯は、姉貴が作った焼うどんだった。
俺らがスジを取った絹さやと、タマネギと豚肉が入っている。
「ユリアちゃんが作る料理が、世界でいちばんうまい」
とコータは言った。
「料理って言うほどのもんじゃないでしょ」
笑いながら、姉貴はまんざらでもなさそうだ。
「ユリアちゃんが東京行ったら、食えなくなるね」
「さみしい?」
「うん」
コータはうなずくと、焼うどんを頬張った。
変に間をおいてから、
「でも大丈夫だよ。ユリアちゃんが行きたいなら全然。
俺も卒業したら東京行くから」
「高校の二年間は長いよ」
姉貴はそう言って、麦茶を飲んだ。
「長くないよ。何年片思いしてると思ってんの」
コータは、一瞬マジな目つきで、まっすぐに姉貴を見つめた。
それからすぐに、いつもみたいにニパッと笑う。
「絶対かっこよくなってユリアちゃんを振り向かせてみせるから、二年後、びっくりしないようにねっ」
うわあ。めげない。
コータってすげえ。
今のは姉貴も、ちょっとはグラッと来たのではないだろうか……。
姉貴の表情をうかがうと、「まったくコータは」とかなんとか言いながら、グラスを持ち替えて、ニョホニョホしている。
バカな姉貴だ。
浅野だか浅井だか知らねえが、彼氏となんて、さっさと別れてしまえばいい。
そいつがコータほどいい男だとは思えないし。
つややかな絹さやを口に入れると、キュッと青っぽい味がした。
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