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夜十二時を過ぎても、ルリは来なかった。
スマホを開いてみたけど、なんの連絡もない。
シャワーを浴びて、ベッドに寝そべって、俺はまたスマホの画面をのぞきこむ。
腹の中を、涼しい風が通り抜ける。
って、情けないな。俺。女子かよ。
俺はスマホを床にぶんなげて、起き上がった。
おっし。ルリん家行こう。
家族に気づかれないように、そろーっと玄関に向かい、クロックスに足を突っ込んだ。
ドアを開けて、夜の空気を肺に吸い込む。
昼間のうちに降った雨が、土やアスファルトに染み込んで、ムンとした匂いを放っている。
夏のはじめの、夜の気配だ。
すこし歩くと、ルリの家の赤い屋根が目に入る。
「ウォンウォンウォンッ」
突然耳をつんざくような鳴き声がして、俺は腰を抜かしそうになった。
うおう。忘れていたぜ。
猛犬ウズマサ……。
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