39人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
後ろに手につき、しりもちをついた体勢で、俺たちは、パチクリと目を合わせた。
一瞬何が起きたのか、分からなかったが。
木の柵がぶっ倒れて、俺とルリは、仲良く池にダイブしてしまったらしい……。
「ぷっ。あはは。あはははは」
ルリが吹き出して、ハラをかかえて、笑いだした。
俺にもその笑いがうつってしまう。
「池が浅くてよかったなあ」
「ウン。夏でよかったよ」
ああ。そうだ。
夏でよかった。
すぐに夏休みもやってくる。
髪からポタポタと水滴を垂らしながら、ルリは、すばやく俺のくちびるを奪った。
な――。今のって。
口を押えてルリを見つめると、ルリはいたずらをたくらむような目でほほえんだ。
「えへへ。壱、大好きだよ」
う。ああ、顔が熱い。
頭上では、下弦の月が冴え冴えと、俺たちのことを照らしている。
最初のコメントを投稿しよう!