王子様に変身

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「ねえ、壱の好きなスミレさんって人、見たよ。まじでかわいいね」 「お、おう」 ルリに言われて、俺は気恥ずかしくなった。 ホソバオキナゴケを人差し指でツンツンつつく。 「女子トイレで聞いたんだけどね。 スミレさんたち、どんな男の子がタイプかって話しててさあ」 コータも興味をひかれたらしく、漫画を開いたまま、顔をあげた。 「ほほーん? スミレちゃん、どんなだって?」 「うん。王子様みたいな人……なんて言ってたよ」 「王子様?!」 俺とコータは声をそろえた。 王子様とはどんな人だろう。 コータが、みけんに人差し指を当てて、首をかしげて言った。 「とりあえず、王子様はカボチャパンツはいているよね?」 ルリが真顔で同意した。 「はいてるはいてる。んで、モーツアルトみたいな髪型してんだよね」 「だよねだよね」 「ウン。とりあえず髪型からだと思う。あたし、いいこと思いついた」 ルリは、ダダッと勢いよく階段を降りて行った。 戻ってきたと思ったら、姉貴のヘアアイロンを手にしている。 これを取ってきたらしい。 コンセントにプラグをさしながら、ウキウキした口調で「うまくできるかなあ、あたし」と言う。 こいつは……巻く気だ! 俺の毛を!
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