1人が本棚に入れています
本棚に追加
その日の放課後、風紀委員の教室の見回りが終わった後に教室に向かうと、教室はドアが開いていて、そのまま入ると、そこには田中くんがいた。田中くんは窓の近くに立って、外を楽しそうに見ていて、私には気が付いていないみたいだった。私もそっと窓の方を見てみると、そこには同じクラスの小林瑠香という子の姿があった。小林さんは、女子らしくて可愛い人で、性格も割と良さそうな子である。話したことは無いけど、恐らく田中くんが好きな人。
私は内心やっぱりそうかと思いながら、自分の席に鞄を取りに向かった。椅子を少し動かした音でやっと田中くんは私がいることに気がついたみたいで、驚いた顔で私を見ていた。
「石井、いつからいたの?」
「今さっき。風紀委員の教室チェック終わったから。」
「石井って真面目だよな。高一で図書委員一緒だった時も、当番の時には必ず行ってたし。」
「田中くんも毎回来てたでしょ?委員会の仕事はやっておかないとだしねー。」
「まあな。図書委員やってる時に、意外と図書室落ち着くなって気付けたから良かったけど。中学生の間、バスケばかりに集中してたからな。」
そう言って田中くんは笑ってて、そんな前から集中するものがあったんだなと少し羨ましく思った。私はその笑顔がやっぱり好きだと思った。
「バスケ部は、もう引退したの?」
「いや、今年中はいようと思っている。塾にも行かないといけないけど、出来る限り続けていたいから。石井は部活引退したのか?」
「私もまだ。だけど、行く回数は減ったかな。バスケ頑張ってね。運動できるのってすごいと思うから。」
「おう、ありがとう。」
私はうん、と頷いて、もう帰るねと言って教室から出ていった。
私は振り向かずに歩いていき、話せた嬉しさとその前に見た小林さんを見ていた田中くんの顔を思い出すと、悲しさとか嫉妬のような感情が湧いてくる。そんな手に負えない感情を抱えながら、私はいつもの場所に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!