1.不思議な人

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近くのファミレスに移動する道中、西野さんは何気ない話を続けてくれて、すっかり私は警戒心が解けていた。西野さんに名前の方で呼んでと言われたので、由希さんと呼ぶようになった。由希さんが通う大学は大学名を聞くと、有名で、レベルが高めな大学だった。それでも第三志望の学校だったみたいで、受験には落ちまくったと笑って言ってた。そして、今笑えるのは後悔していないからだ、と。 ファミレスに着いた頃には、6時近くになっていて、家で夕飯を食べるからと一時間だけいることにした。 「ファミレスもう来ましたけど、由希さんこそ時間大丈夫だったんですか?大学って忙しいんじゃ…。」 「大三の秋学期にもなると、授業数少なくて済むからね。まあ、授業の難易度は上がるから、結局は大変なんだけどね。今日は授業もないし、たまにはのんびり過ごそうと思ってたから。」 由希さんはそう言って微笑むと、メニューを見始めた。私も由希さんもドリンクバーだけ注文して、私はジンジャーエール、由希さんは紅茶を取りに行った。由希さんは珈琲が苦手で飲めないんだ、と笑いながら話していた。私も眠気覚ましに、試験週間の時に飲むぐらいであまり飲まない。 席に座って、私たちはまた学校の話をして、授業や友達のことを話した。その流れで、由希さんは本題について切り出した。 「さなよんは、学校で何かあって落ち込んでいたの?制服で一人でいたから、そうなのかと思って。」 私は話すかどうか一瞬躊躇ってから話すことにした。他人だからこそ、話せることもあるかもしれない。 「私には好きな人がいるんです。高一から同じクラスで、好きになったのは高二なんですけど。バスケが上手くて、運動神経が良くて、かっこいい人なんです。でも、薄々気がついていたけど、その人には好きな人がいると思うんです。仲良さそうに話していることもあるし、今日は放課後にその子のことをとても優しい顔で見ていたんです。そういうのを見ていたら、どうすれば良いか分からなくなってしまって…。」 由希さんは私が話している間、真剣に話を聞いてくれていて、それだけでも少し安心する気がした。 「私も今片思いしている人いるんだ。五歳上のバイトの職員さん。大学で事務系のバイトしているんだけど、その人のことかっこいいなって思って。だから、さなよんの気持ち少しは分かる。私が思うのはね、叶わないかもしれないって思っても無理矢理思いを無くすのは難しいっていうことだよ。だからね、とりあえず保留にしておくっていう選択肢もありじゃないかなって。」
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