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第二章/10
「しかし、ヴィス、これからどうするつもりなのですか? 私をさらったのはよいのですが、もしも事が明るみに出れば、あなたは極刑に処されますよ」
「死罪が怖くて、恋愛はできないさ。それより、あんたを失った『客』たちが暴徒化しないか心配だな」
「奴隷を買うかもしれませんね」
「行ってみるか」
「ですが、」ユディトは、遠慮がちに遮った。
「姿を見せたら、正体がばれてしまいます」
対する男の唇は、笑みのかたちをなしたままだった。「いいから任せろ」と胸を張る彼の口調には、微量の淀みすらない。
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