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「とりあえず、もう二度とこんなことはしないで。」
むつみがみさきに警告する。
「不法侵入は立派な犯罪だから。」
「すみません…それと、ありがとうございます!!」
みさきは警告と許しに感謝した。
逃げるように、その場を去っていく。
あまり、敵情視察は気持ちが良いもんじゃない。
「…?」
去る時にキラリ、とみさきの制服の腰のあたりで何かが光ったのを悠二は見逃さなかった。
初対面の印象が最悪だったから、自分たちもあまり自己紹介しなかったしみさきについて深くは観察しなかった。
だが…みさきの制服にはつなぎの腰のベルトを固定するスカートの生地のあたりに、星型のフレームのレジンアクセサリーのポールチェーンの飾りがつけられていた。
レジンアクセサリーとは、樹脂を太陽光やライトで固めた素材で作ったアクセサリーである。
星型フレームの中央に浮き上がる英文とラメ…小学生の工作並みの出来だが、悠二はそこのアクセサリーを見るなり妙に胸のあたりがムカムカする感覚を覚えた。
別に悠二やむつみが工作が得意なわけではないのに、だ。
たぶん、初対面が最悪だったからかな。
悠二とむつみはそう考えて、謎の一般人の背中を見送ることにした。
交流会は始まったばかりだ…一般生徒との交流が苦手で、ナビの見舞いに一旦席を外しただけである。
そして、その様子を遠くから眺める存在がいた。
「ぬるい、ぬるすぎる。」
短髪の無精髭…よれよれのスーツ姿の20代半ばのやる気のない男性教諭は、宙に浮いて空から悠二やみさきやむつみを見守っていた。
特務部顧問の相羽宰である。
「やっぱり、俺って教師の才能無いんだなぁ…でも脳筋には脳筋なりに出来ることがあるだろう。」
戦いとは、互いが戦場に立った時から始まるものではない。
戦場に出向く前の下準備からでもすでに戦いは始まっているのだ。
生命を奪いあう実戦なら、なおさらのこと…リーヴルのような手癖の悪い相手ではこの先生き残れない。
だから、脳筋なりに相手をよく見ていろと言ったのにこいつらは全く見ていない。
特務部の寮の手前って、最重要拠点だぞ?
一般人への結界張ってあるって最初に話しただろが。
一般人がどうやって抜けたんだよ…リーヴルの手引きに決まっているだろ。
一般人だからと、甘く見すぎだ…配慮が足らなさすぎる。
「隠居したかったのになぁ…。」
顧問はため息をつきながら、己と教え子のふがいなさを苦々しく思うのだった。
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