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「そろそろ準備は整った。 我々は特務部を破壊しに向かう。」 みさきが悠二とむつみと会ったその日の夕方頃…超常研ではかのこ部長が、唐突に全員に号令を下す。 「待ってました!!」 仮面の魔法使い以外の大援声。 待ちぼうけは、心身共に良くない。 かのこ部長の演説は続く。 「かつて部下にあんな命令をした顧問、止めようともしなかった部員。 ハシモトの凶行が、我々からすべてを奪った。 やつらは、この町を守るつもりはない…必要なものを生かし、都合の悪いものを潰す…それだけである!」 「おおお!」 歓声はヒートアップしていく。 仮面の魔法使いだけは、仮面の下でテンションが下がってきたが。 表に表情が出ない仮面であることには感謝せねばならない。 今の超常研のメンバーには倫理観がないから、下手な言葉は口に出来ないのだ。 (やっぱり間に合わなかった…こんなことになるんなら、つまらないプライドなんか捨てるべきだったな。 もう、守るべきプライドだってあの時壊れてしまっていたのに…何を守ろうとしていたんだ。) 魔法使いは、自分の判断を後悔する。 人には誰にでもどうしても譲れない一線というものが存在する。 仮面の魔法使いは、それを失いたくなかっただけだった。 ハシモトは、超常研壊滅のあの日…仮面の魔法使いからそれを奪った。 超常研は異界化に巻き込まれて壊滅したのではない…あのとき、ハシモトが超常研を異能で襲撃したのだ。 生き残ったのは、仮面の魔法使いのみ…かのこ部長も一度殺されてからリーヴルの魔力で転生したのだ。 リーヴルの魔力は異界に通じる…だから、転生した時に人間の倫理観が消えたのだ。 特務部の崇高な活動の邪魔、1年前別の超常事件に巻き込まれたかのこ部長の盾になったハシモトの妹の幹箸希沙菜(もとはしきさな)の間接的カタキ、妹が怪物からかのこ部長を身を挺して庇ったのに記憶と一緒に謝罪もせず危機意識すらも無くしてオカルト地域巡礼を辞めない人間時代のかのこ部長。 一般人ゆえ、記憶も消して賠償もさせずに見逃して放置した顧問への不満…まぁ何であれだ。 無自覚な加害者と、人生の支えを失った異能の被害者が同じ学舎の下で暮らすというデリカシーの無さすぎる配置で悲劇が起こらないはずがない。 仮面の魔法使いは、その光景を見せつけられ精神の一部が壊れたのだ。
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