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仮面の魔法使いがこの性格破綻者たちに従うのは、自分の中の譲れない一線を守るためである。
人間時代のかのこ部長には返しきれない恩をたくさん受けたが、それを返す前にハシモトに殺された。
人間時代の超常研のメンバーにもたくさん優しくしてもらったが、もう彼らは人間には戻れない。
ハシモトはおそらく生きてはいないだろうが、彼もうまくいけば復讐の道に進ませられなかったかもしれない。
すべて、自分が信念を貫き…意地を張ったために巻き込まれた人たちだ。
リーヴルは隠れ異能者の目利きの達人…欲しい能力の持ち主を手に入れるためなら先んじて自慢の情報網とともに誰でも利用し、誰でも潰す。
いや、自分を欲しがってすらいないだろう…自分の宿敵である異能力機関に渡りすらしなければ敵の手を削ぐという点では成功しているはず。
最初は、街中での普通のスカウトだったが、もちろん断った…しかし、異能力絡みのスカウトは下手に断るとエスカレートどころではすまなくなる。
復讐の片棒の裏取引を持ちかけたハシモトに自分の恩人を襲わせて、復讐の片棒としてすがりつくなら良し。
信念を貫くために契約を断っても、特務部を裏切ったハシモトに恩人を奪われたという事実は常に仮面の魔法使いにじわじわと特務部そのものに対する不信と確執をまとわりつかせ、いずれ心を壊すことになる。
だから、仮面の魔法使いだけは襲われなかった…手駒として使えるかもしれないから。
特務部は秘密裏に動く…仮面の魔法使いを発見しても機密を守りやすくするために自分を逃がしはしないだろう。
自分を陥れたリーヴルにすがりつくか、自分を助けてくれなかった相羽宰顧問を恨みながら生きるか、立場上板挟みになるのだが…どちらを選んでも仮面の魔法使いの心が晴れることはない。
どっちを選んでも同じなら、かりそめでも自分の願望を汲んだリーヴルにつく…仮面の魔法使いはそう考えているのだった。
かのこ部長の皮でも生きていたら…。
仮面の魔法使いは、狂った安堵感に満たされていた。
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