不可避の衝突

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「そっちに逃げたぞ、仕留めろ!!」 ここは九繰(くくり)市、虹夏(にじか)高等学校の体育館。 どこかの戦隊の隊員服のようなカラフルな制服姿の学生が数名で仮面をつけたお揃いの色の魔法使いのようなローブと装飾がアクセントの制服の生徒を二人、体育館の隅に追い立てる。 背中は壁だ…もう逃げ切れない。 前には刀を持って仲間が自分を守るように立ちはだかってくれるが、やはり戦うには無茶が過ぎたかもしれない。 壁に近い魔法使いのような制服の人物は、そうはっきりと悟った。 虹夏高等学校には、表と裏の意味で制服が二つ存在する部活が二つ存在する。 九繰市異界化事件でその調査と対処をする異能力者集団で校長自ら創設し…精鋭で構成された特務部(とくむぶ)という部活と、ひと月ぐらい前まで異能力者とは無関係なオカルトマニアが日常でいろいろなネタをダベって『いた』超常研である。 彼らは部活の時だけ制服を切り替える…通常は虹夏高等学校が支給している普通の広襟の繋ぎのような制服だが、部活動時にはこういう部活に沿った装いに変えるのだ。 異界化とは、町のいくつかが何処ともしれない異世界に変わること。 二か月前ぐらいから、九繰市では一般人がいきなり変化した異世界に迷い込む事件が連発し…特務部は密かにその対処に追われていた。 そこで虹夏高等学校の超常研が風の噂で非日常の匂いを嗅ぎつけ…秘密にしたいのに騒ぎたてた。 とりあえず、その対処には『ハシモト』なる特務部の部員に一任し…数日後には超常研が異界化とともにはぐれ妖魔の群れに壊滅させられたという話になる。 超常研の部員はその時どういうわけか、部長の高鱒(たかます)かのこ以外の4名の肉体が異形化していたらしい。 異界化に巻きこまれたのかもしれないが、そもそも異界化の理屈すら特務部のメンバーもよく分かっていないし何が起こるか明確な目安が無いのだ…そもそも超常研の部員がどうなったかはハシモトからの証言しか手がかりはない。 しかし、その日以来特務部と異形化してしまったもと超常研の部員は互いに敵対心を抱えて抗争状態になったのだった。
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