転機

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一方、仮面の魔法使いは体育館から少し離れた場所に足を向けていた。 体育館にはまだ距離があるのに、軽くノックをするように何もないところを叩く。 感覚はなかったが、軽い痺れが走って治まった。 (やっぱり、一般人遮蔽用の結界だ…しかも波長を変えてない。 分かってないんだ、あの時飛ばされた理由が。) 異能力者は一般人が戦闘現場に近づかないよう、現場には術式で思考力を奪うなどの結界を張ったりして周りから遠ざけている。 特務部は必ずといって良いほどこの結界を張っていて、超常研はそのせいで異能のアレコレが広まりづらく活動がしにくくなっている。 しかし、これもしょせんは術式で動いているのである…機械や数式と同じで発動には仕組みと法則があるのだ。 仮面の魔法使いは、インナーの腰紐に結わえたレジンのアクセサリーをローブの上から押さえた。 小さくぶつくさ唱えるように、呪文の詠唱…手足をピラピラさせる。 「結界とは閉ざす扉、鍵によりて開くは異界の扉。 鍵は合わせるもの、合わせるはすなわち結び…繋ぐは過去から未來…すなわち化石。 流れ行く魔術の国からもたらせし化石の名において、我は閉ざすものに命ずる…術式拡張・三千世界(じゅつしきかくちょう・さんぜんせかい)。」 ヴォン!! 結界に魔力を注ぎ込み、結界を作り出す術式の構成を書き換えていく。 彼女が口にした魔術の国というのはエジプトあたりかな…昔の国は文明云々の問題で魔術だらけだったけど。 で、樹液か何かで固まったまま古代の虫とか何かが現代にまで保存された状態で発見されて、装飾品として愛されているのをスカラベと呼ぶが…あれって確かエジプト発祥だったような気がする。 そういう意味合いも込めて、リーヴルの魔力のかけらを自分の魔法発動の媒介として樹脂であるレジンに魔力を混ぜて固めたアクセサリーを彼女は勝手にスカラベと呼んでいたりする。 術式構築は、いろいろ意味合い付けが必要過ぎて厄介なのだ…書き換えるならなおさらである。 あらゆる場所に対してこじつけ全開の術式は、一般人遮蔽用の結界を中に入っている人物を無差別に襲い…無数の効果をもたらす異界に書き換えていく。
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