転機

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「あー、やっちゃったか。」 術の発動には集中するが、終わってみれば背後からだらしない男の声が聞こえた。 仮面の魔法使いは、我に返って声がする方に顔を向ける。 特務部顧問の相羽宰である。 基本的に顧問でありながら部員全員を放置するが、リーヴルが唯一恐れる男でもある。 リーヴルは理由を教えなかった…本当なら、対処のために教えても良いもんだが。 世の中、知らないことが良いこともあるらしい…顧問は仮面の魔法使いにゆっくりと近づいて話しかけてくる。 「リーヴルが俺を警戒しているのに、全員誘い込むまで大技使っちゃ駄目だよ…伏兵になるからね。 ああ、俺は術式以外取り柄のないあんたに捕まるほど甘く見ないし油断しないし…ましてや馬鹿じゃないからね。 ついでに教え子を人質とか、そんな甘い手にも乗らないからね。 両者ともども必死で信念とともに生命の奪い合いをしているのに、どんな卑怯な手を使うか最悪を予定せず自分たちが捕まることを考えず誰も巻き込むと考えない馬鹿が悪い。 散開した陣で陽動をかけて各個に分断し、使えそうな異能力者をチマチマ寝返らせるのはリーヴルのいつもの手口なのに…同じ異能力者というだけで一般人に向かって丸焼き未遂のハシモトを信じやがって。 おかげで隠居出来ないじゃないか!」 手塩にかけた教え子全員への毒舌。 とても教師か顧問には見えない。 ついでに言うと気配も感じない…だのに、威圧感と迫力だけはひしひしと感じて震えが止まらない。 こんな教師、見たことがない。 「そういうわけで、君…うちに入らない? お給料弾むよ?」 迫力満載で愚痴ってると思いきや、次は敵のスカウト。 この顧問、ノリが軽すぎて変わり過ぎる…考えが読めない。 「はぁ?」 仮面の魔法使いは、ペースを崩される。 「理由ならあるが、基本的には使えない味方より、使える敵を使うぞ俺は。 何なら、うちの馬鹿どもの面倒とかも見せるけどね。」 それが本当ならこの男、人に対して敵とか味方とか、感情とか好き嫌いとかそんな概念がない。 必要なら使えるものは何であれ利用する…それだけの気概で生きており、それが出来る人なんだ。 だから、リーヴルが唯一恐れる。
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