転機

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「死んだ人間の皮なんか、同じもんはどれひとつとして無いからなァ! かのこ部長を生き返らせるつもりで、ずっと制服よろしくそいつの皮を被ってたなリーヴル!!」 みさきの前で口にしてはならない事実だった。 「…!!」 自分のせいで仲間を失ったみさきが、自分の心を守るために目を背けていた事実。 ギチギチ…シャァァ!! かのこ部長だったものはその形を変形させ、桜色の表皮と空色のガラス玉が埋め込まれた羽根の生えた生き物が飛び出し…かのこ部長の皮は地面に投げ捨てられる。 「…ひぐっ、うっ…。」 みさきは直視できなくて、目を背けた。 そもそも異界化案件自体、リーヴルが九繰市にもたらしたもの。 リーヴルとしての顔をみせて発狂したみさきがいなくとも、別の誰かや方法ぐらいは探せる能力はあったりする。 「やらかしたな。」 宰顧問は、あまり驚いていないようだった…慣れているからかもしれない。 『あんた相手に、彼女を庇って争うのは分が悪いだけよ。 もう、種は仕込んだからね。』 ハシモトのことだ…みさきはさらに身をちぢこませる。 「やれやれ、逃げるつもりか。 いい加減、終わらせて欲しいぜ。」 一方、宰顧問はリーヴルの意図を察しながらも止めようとしない。 止めるために戦うよりここは放課後の学校である…こちらの生徒や、街中の人間を守ることを優先したのだろう。 みさきは、宰顧問だけはちょっと信用しても良いかと考え始めた。 だが、リーヴルは高速で上空に去っていく。 『相羽宰と名乗るあんたと戦うなら、もっと良い世界があるでしょ。』 最後にテレパシーで捨てセリフを残す。 『もし、より多くの破滅を願うなら…いつでも物語を開くと良いわ。 待ってるから。』 みさきの緊張は、止まりそうにない。 リーヴルとは『物語』を意味する。 世界に物語を描くように世界を彩る異能犯罪者。 その道を夢見るなら、彼女の手を取ることもあるのかもしれない。 今は、そんな大層な夢を見るほど成熟されていないと自分では分かっているのだが。
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