不可避の衝突

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「あの刀は!?」 ピンクの制服姿の特務部の女子生徒…巳枝(みえだ)むつみが悲鳴を発する。 ロングのストレートヘアの側面を少しだけ3つあみにした、凛とした佇まいの2年の女子。 精神物質化能力の異能力の持ち主の彼女には、いつも護衛代わりの実体の無い仲間がいる。 ゆえに見間違えようがない、そんな『彼』の刀だ。 「ああ、悠二(ゆうじ)の刀だ。 そいつはもしかして…?」 後ろで指揮を取っているのは永染征梧(ながそめせいご)。 特務部3年のブレインだ。 「そんなバカなことがあるわけがない!」 むつみがあり得ない事象に対して、必死で否定する。 「超常研って、もとはただの一般人の集まりでしょう? 魂を失った半妖の身体を好きに操るほどの魔力の持ち主の後ろ盾を得られる一般人なんて…!」 以前の超常研との抗争にて、仲間を失っていた特務部は仲間の肉体を取り戻そうと焦っていた。 捕まる危険のリスクを承知のうえで一般人をたぶらかす異能犯罪者が超常研を動かしたと征梧は思っていた。 しかし、奴らは実力が高ければ高いほど修羅場から身を守るために慎重に動く。 世界の裏をまったく知らない一般人のオカ研に、狩られる危険を承知のうえで裏社会の大物が顔を見せる価値はない。 特務部顧問の相羽宰(あいばつかさ)がちょっと名が知れた異能だから、異能犯罪者が彼の討伐の拠点に落ち目の超常研を乗っ取ったと考えていた。 特務部の創設は2ヶ月前…つい最近承認されたばかり。 九繰市安全の理念のもと、異能力者の活動を最優先するため特務部の新規創設に伴い、学園の経営陣が経費節約のため顧問からの進言もあって異能力者を守るための隠蔽工作と異界化探索の邪魔になる超常研の活動を一時休止させたという事情がある。 事情も説明されず、3年最後の文化祭にむけての出展云々などの楽しみを含めた好きな部活をやめろと学園長権力で一方的に金をやらんと仲間と一緒に日干しにされた高鱒かのこ部長は大激怒。 そのかのこ部長を一人で黙らせに向かったのがハシモトだ。
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