灰色の日常

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「えっ…特務部がこっちに来るって? どうしよう、早退しようかな…?」 虹夏高等学校の長谷野(はせの)みさきは帰宅部の2年だ。 つなぎのようなワンピース型の広襟の制服に、亜麻色のショートヘアの上部を少しリボンで結った平凡そうな女子である。 昨日体育館にて激闘があったなど無関係と言わんばかりに、教室の隅っこの机の上で窓の外を眺めている地味子。 特務部はイケメンもいるので女子受けが良いから半分ぐらいは注目の的だが、外部との接触には全くないわけではないが積極的ではないため高嶺の花でもあるのだからみさきは親友の幸城千早(こうじょうちはや)のこともあってあまり好きになれない。 千早は特務部に幼なじみを奪われたのだ。 千早の幼なじみの郷壺雪徒(さとつぼゆきと)が異能力に覚醒し、特務部に隔離されてから千早は変わってしまった。 悪い子ではないのだが、行動力がありすぎてフォローがいないと周りにワンマンと誤解されるという難儀な性格の千早は運動部の助っ人と誠実な雪徒のフォローで何とかクラスに馴染めていた。 それが引き離され、ストッパーがいなくなった彼女は自由にやり始めると一気に周りから浮いてしまい…地味子ゆえに目をつけられやすいみさきと巡りあうやあぶれ同士で仲良くなった。 千早の赤茶色の髪の毛は今やボサボサであまり手入れをしていない…目をかけられないとなおざりになりながら彼女から女の子らしさがゆっくりと失われていく。 みさきが最低限の身だしなみを調えているとはいえ、勢い任せの千早の面倒はなかなか手がかかる…異能力云々のことは別にして雪徒が去らなければみさきも苦労しなかったのだ。 逆ギレとも言えるがそういう事情も理由のひとつで、みさきは特務部をよく思っていない…しかし、虹夏高等学校ではそういう意見は半分禁句なのでみさきは千早と隅っこにいるしかなかった。 「行こうよ…何か面白い話とか、聞けるかもしれないし。」 特務部のメンバーが本格的に一般教室に顔を出すと言われている今日でも。
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