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「千早は楽しみでしょ、私はちょっと遠慮しようかな?」
みさきは、自分の手を引こうとする千早から逃げようと必死で言い訳を探す。
「駄目だって、みさき。
みさきのこと、雪徒に紹介したいもん。」
(それは、ちょっと困るんだけど。)
もともと苦手なタイプなのに、千早は結構強引に勧めてくる。
「プライベートは立ち入りしたくはないかな…特務部の活動内容やメンバーの人選なんかにはちょっと興味があるけど、こういうのってあんまり教えてくれないよねぇ。」
それでも断れないのが、真面目なみさきの弱いところ。
実のところ、みさきは特務部の学生寮の近くをうろうろしてたことはある…特務部は顔を合わせたくないぐらいには嫌いだが、活動内容などは調べたいから異能力者相手にこっそり行動しているという傲慢不遜な一般人。
無論、何回も失敗しているがアポとかは無理だと信じている。
「一回、きちんと話せば良いのに。」
こちらのあたりは、千早が正論。
まっとうな一般社会の礼儀の話ならば。
「あ、そういえば。」
だから、ばっくれるための嘘をつく。
「そういえば、今日はお母さんにお使い頼まれてたんだ。
放課後になったら早く帰らないと。」
ただし、ばっくれる嘘は小学生レベルではあったが…もともと嘘は得意じゃない。
「そっか、それじゃ仕方がないね。
紹介は次にするか…じゃーね。」
しかし、千早には十分に効いた。
手を離され、幼なじみと再会出来る喜びを胸に自分の席に戻っていく千早。
「ありがとね、千早。」
残されたみさきは、その姿を複雑な気持ちで眺めていた。
人前なのに、嫌なため息が漏れてしまう。
千早の面倒は多少煩わしかったが、いざ自分のもとから離れるとなると少し寂しい。
だけど、これで良いとみさきは思うのだ。
彼女は、『こちら』に来てはならない。
誰も信用せず、誰も助けてくれない生き方しか出来ない自分に比べたら…千早の生き方は輝きに溢れているはずだから。
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