灰色の日常

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キーン、コーン、カーン。 今までなかった特務部と一般生徒との交流活動は、今日の放課後に行われることになっている。 もちろん正面から参加するつもりのないみさきは、真っ先に教室を飛び出した。 次にすることは、もぬけの殻になっただろう特務部の学生寮への侵入といえる。 校舎から隠れるように、西洋屋敷のような外観の建物の表面と寮と外を阻む柵にはぎっしりとツタが絡みついていて半分廃墟のようなもの。 実際、近寄る者もおらずみさきにとっては安心だった。 入ってこないと確信しているからこそ、ここには見張りが存在しない。 ガッ…。 周りを見回るでもなく、制服姿のみさきは躊躇なく特務部の柵に手をかけた。 「茨とか、生えてそうだけど。」 不安はあるが、特に困ることはない。 しかし、運動神経が良いわけではないみさきにとってその行為はたかだか2メートルの柵すら遥かな壁に等しかった。 「こうなったら…。」 「おい。」 みさきが柵に手をかけながら何か別の方法を思い至ったとき、怒れる声が背後から聞こえた。 「きゃあぁぁぁぁ!」 背後から声をかけられるゆえに悲鳴という、しごく当たり前なリアクションで後ろも振り向けず大音声を鳴らし…かつそのまま脱力して地面にズリ落ちるというテンプレをやらかしたみさきは無論侵入未遂である。 「ここは特務部の学生寮だぞ。 一般生徒が何やってんだ。」 2年の正義感の強そうな目つきの特徴もない髪型ながら赤がかかった茶色の髪の毛の男子生徒と、巳枝むつみの二人。 制服は通常の青いつなぎのような制服だが、どちらも特務部の部員だ。 てか、交流会じゃなかったか? 見張りはいないと思っていたのに、やっぱりただの交流会じゃなかったか。 特務部もバカじゃなくなったかなぁ…異能力者は一般生徒を使わないとたかをくくってたから動きやすかったのに。 特務部と超常研が抗争状態にあることは、みさきをはじめいくらかの一般生徒は様々な事情で理解している。 特務部は基本的に異能力者という特性上、一般生徒とは一定の距離がある…だから溝が開きやすい一般生徒を伏兵に情報だけを探らせるのは超常研もやっていることで、みさきはそのクチでもある。 超常研の部員として生徒会に登録されていないので、特務部から監視対象になることがないのだ。 文化系の部活では珍しい、部活の助っ人という扱いなのである。 みさきは1年のとき、地味子という理由で周りのクラスメートからストレス解消用のサンドバッグとして目をつけられていた。 それから逃げるためしばらくかのこ部長に匿ってもらっていたため、特務部と超常研の抗争の裏方として巻きこまれたのである。
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