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暫しの沈黙ののち、はあーっと重いため息をついたのは明智さんだった。
「それが出来ないから、君を呼んだのだ」
「え、なんでできないんです?」
「俺たちが魔法使いになれたのは、本物の魔法使いである班長が、俺たちに魔法使いになる魔法をかけたからなんだ。俺たちが魔法使いでいられるのは、あと──そうだな、せいぜい5分くらいか」
キラキラステッキを、まるで新体操のリボンみたいにポーズをとりながらクルクル回すシマりんさんが、真剣な表情で言った。
「え、でも、だったら別に何も問題なくないですか? 魔法使いである今のうちに、魔法を使って探せば……」
「……にゃあ」
「“そうだな”と椎野が言っている」
明智さんはすっかり椎野さんの通訳だ。
……いや、今はそんな事どうだっていい。
「みゃあああ。みゃああああああ。みゃおぅ。みゃううう」
「“班長様と血が繋がってるコイツなら、テメエらみたいな"なんちゃって魔法使い"じゃなく、本物の魔法使いになれるかもしれねえ。コイツを魔法使いにして班長様を探せば手っ取り早く済む”と言っている」
えっ?
いやいやいや。僕、魔法使いとか、そんな中二病丸出しのものになんかなるつもりないから。ていうか、なれないから。
「ま、待ってくだだいよ。久我亮衛が本当の魔法使いなら、ほっといてもそのうち帰ってくるんじゃないですか? 魔法で」
明智さんと椎野さん、それにシマりんさんが、互いにきょとんとして顔を見合せた。
「……それもそうだな」
「じゃあ、気兼ねなく待つか」
「みゃ」
「血の繋がりってだけで、わざわざ呼び出して悪かったな」
「いえ……」
僕たちはなんとなく机に向かって座り直すと、ずずずとお茶を飲んだ。
………なんだこりゃ。
[END](どうもすみません)
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