久我亮衛失踪事件

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「ネムールの呪いを解く方法はひとつ」  明智さんが、凛とした声で言った。 「久我亮衛の血縁者の中で、最も純粋な魂を持つ者の髪の毛を1本、久我亮衛が心から愛する者の小指に結び、久我亮衛に口付けをする」  久我亮衛の、血縁者の中で、最も純粋な、魂を持つ者の………あ、僕? 「僕は髪の毛を1本提供すればいいんですか?」 「そうだ。それを椎野に渡せ」 「はあ?」  椎野さんが、ネコ耳をつけたまま、ひどく顔を歪めた。 「椎野、宮本悠真の髪の毛を小指に結べ」 「断る」 「班長がこのまま眠り続けてもいいというのか?」 「それならそれで仕方ない」 「薄情者!」  ………それからおよそ1時間にわたり、どうにか椎野さんを脅し──説得して、椎野さんの小指に僕の髪の毛を結わくことができた。 「なんで俺が」 「いい加減、観念しろ」 「おい明智。なぜ携帯を構えている?」 「いつか呪術師と対決する際のアレだ、ええと、保険みたいなものだ」 「嘘くせえな」 「さっさとやれよ椎野」  真正面から明智さんが携帯のカメラを構え、椎野さんがしぶしぶ久我亮衛に顔を寄せる──    ちゅっ 「はあっ? きさま、なんだその生っちょろいチューは! ほら、班長だって起きないじゃねえか、もっと勢いよくブチュッといけ、ブチュッと!」 「がんばれ椎野、がんばれ椎野! シマりんも心から応援するお☆」 「班長(コイツ)が心から愛する者ってのが俺じゃねえって話──」 「そんな訳はねえ! やるんだ椎野、濃厚なヤツを、ブチューッと!」 「がんばれ椎野、がんばれ椎野!」  ぶちゅうううううっ  カシャカシャカシャカシャカシャ 「うおおおおうっ、いいの撮れたあっ! これうまく加工して、今度のイベントで配布しよう。次回予告とかテキトーに入れちゃってもいいな。ふふふふふふふ!」 「俺に4ページくれるって約束、守ってもらうからな?」 「安心しろ志馬。ちゃんと告知済みだ」  うふふふふふふ、と不気味に笑う二人に話しかけるのが怖くて、僕は、久我亮衛の傍らに座り込んで燃え尽きている椎野さんの肩を叩いた。 「あの……お、お疲れさまです」  虚ろな椎野さんに、なんて言葉をかけていいか解らない。 「あの、呪いは解けたんでしょうか……? まだ、眠ってるみたいですけど……」 「ああ」  椎野さんは、手の甲でぐいと口をぬぐった。 「寝たふりしてるだけだ、もうしっかり起きてやがる」 「えっ」  驚いて久我亮衛に目を向けた。  心なしか頬が赤くなり、口もとが嬉しそうに微笑んでいた。 [END]
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