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扉の内側から何者かが叩いているという怪異に、僕は「ひぃっ!」と情けない悲鳴をあげて、隣の椎野さんにしがみついた。
恐る恐る椎野さんの顔を見ると、椎野さんは怪奇現象にまったく動じる様子はなく、逆に、まるで獲物に狙いを定めた猫のような目でキャビネットを睨み付けていた。
カッコいい……。椎野さんについお菓子をあげたくなる気持ちが解る……。
と、その時だった。
大きな音とともに勢いよくキャビネットの扉が開いた。
「きゃああああっ!」
悲鳴を上げたのは、明智さん──ではなく、志馬さんだった。つい振り返って志馬さんを見たら、両手で頬を包み込み、どこかで見たことのある絵画のような状態になっていた。
ガシッ!と扉の縁を、内側から伸びてきた手が掴んだ。
ゆらりと中から人影が現れる──。
その人影を見た僕は、無意識に椎野さんの背中に隠れた。
⇒https://estar.jp/novels/25650637/viewer?page=15
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