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「はい、すごく遠い親戚ですが、小さい頃は、何度か祖父母の家で会った事があるみたいです……よく覚えてないんですけど」
「へえ、小さい頃に」
志馬さんの目が、とても興味深そうに輝いた。
「最後に会ったのはいつ?」
「ええと、確か僕が小6の時……祖母の葬儀の時です」
「それは何年前?」
「僕いま23だから、11年くらい前ですね」
志馬さんと明智さんが、意味ありげに視線を交わす。
「11年前ってことは、班長は18歳だ」
そう言って明智さんは、不気味に笑った。何かを企んでいるみたいな笑みだ。
「椎野は14歳……」
「もう付き合ってたんだろうか?」
「どうだろう、もしそうなら、告白はどっちから──」
こそこそと話す二人の前に、だん!と大きな音をたてて缶コーヒーが置かれた。ネコ耳をつけた椎野さんが戻ってきたのだ。
「重要な会議の最中に申し訳ないが、ご所望のコーヒーだ」
馬鹿丁寧な話し方とは逆に、顔が怒っている。めっちゃ怒っている。でもネコ耳。
「あーっ、椎野、ありがとう、すげえノド渇いてたんだ!」
志馬さんの誤魔化し方が、可哀想なくらい残念だ。無理やり口角を上げて笑顔を作り、マンガみたいにたらたらと汗を流している志馬さんに、椎野さんが鋭い舌打ちを放った。でも、ネコ耳。
「椎野、それは何だ?」
あたかも「自分は関係ない」といった体で、明智さんが、椎野さんの持つ紙袋を示した。
「刑事課のヤツがくれた」
「はあ? また餌付けされたのか」
「好意を無駄にはできねえだろ」
「ひとつ確認なんだが、椎野にお菓子をくれる刑事課のヤツってのは、毎度同じ人間なのか?」
……なんだろう、話が一向に進まない。僕は何でここにいるんだっけ?
・「それで、あの、久我亮衛の事は……」と、僕は強引に話を戻した。
⇒https://estar.jp/novels/25650637/viewer?page=11
・なんかもう彼らの、緊張感のカケラもない格好を見ていたら、あまり心配しすぎる事もないような気がしてきて、僕は椎野さんの色恋沙汰(だよね?)についての話を聞くことにした。
⇒https://estar.jp/novels/25650637/viewer?page=24
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