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エム子の書き残したレポートを読み終えたエス博士の頭には疑問が渦巻いていた。
……大きな危険? なんだそれ。あと、なんで手書きなんだよ。パソコン使えよ。つーか、プリンターに接続してそのまま出力すりゃいいじゃねーか。なんで手書き!? いまどき一方通行の通信手段なんて人間でも使わねーぞ。双方向のコミュニケーションじゃ何かまずいことでもあったのか。いや、そんなことより……。
レポートの最後の一文。
「それではちょっと殺ってきますネ♡」が気になって仕方がない。
エス博士は急いでパソコンを起動し、ブラウザを開く。
ニュースサイトをチェックし始める。もうすでに事件を起こしてしまっているのかもしれない、そう思うエス博士の不安をあおるように緊急速報のテロップがニュースサイトに表示された。
「首相死亡」
テロップに浮かぶその四文字が何を意味するのか。それを確かめるため、エス博士はクリックした。
概要はこうだった。
首相が国会議事堂に入るため車から降り、議事堂内までの短い距離を進む際、正体不明のロボットが突如現れ、首相に組み付いて爆発。現在、詳細について調査中、とのこと。
ほかに情報がないか、手当たり次第に検索してみる。すると、動画サイトにその一部始終を録画したものが、マスコミ名義のチャンネルから投稿されていた。
* * *
官邸から出発してきたであろう首相の専用車が国会議事堂入り口に到着する。
車から降りて、議事堂内に進んでくる首相の前に、どこから飛んできたのか、頭上からロボットが降り立つ。
SPが即座に走り寄ってくるが、ロボットは着地するや高速で首相にしがみ付き、その後、爆発した。
爆発によって首相の上半身は跡形もなく吹き飛び、周囲にいたSPたちも大きな怪我を負っている。
* * *
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