8人が本棚に入れています
本棚に追加
いつも通り待ち合わせは家から何駅も離れた駅のロータリー。
停車させている車を見つけ、後ろめたさから回りを気にしつつ助手席のドアを開ける。
「迎えに来てくれて、ありがとう。」
「ああ。」
言葉数は相変わらず少ない。貴方の横顔を見て心臓が高鳴る。この時間が幸せなのに、想いが溢れて我慢が出来なかった。
「ねぇ?私のこと好き・・?」
「・・・、・・ああ。」
返事は少し間があった。それだけで心が張り裂けそうで涙を堪える。
「もっとストレートに好きって言ってくれればいいのに。」
「それが出来ないから困ってるんだよ。」
苛立ちが口調に現れた。でも私も止められなかった。
「どうしてなの?」
「そういう関係だろ、察してくれ。」
チラッと顔色を伺う。真っ直ぐ前を見て私を視界に入れたくないようだった。
「嫌だよ。」
「どうしたの、そんな聴きわけのない女に、いつからなった?」
「取り合いたいんじゃない。ほんの少しだけでも貴方の心が欲しいって想うのは欲張り?」
「取り合うまでもなく、はじめから君のものではないからね。君だって私のものではないだろう。火遊びが過ぎたようだ。」
「っ!!」
「“お互いの本命”と同じ土俵にいるわけではないからね。」
それから、いつも行くお店でランチした筈なのに覚えていない。
車内は無言の時間が続いた。ずっと胸が痛くてたまらなかった。
駅のロータリーで車から降り、黙って手を振る。
別れはほんの一瞬。
直ぐに公衆トイレに駆け込み何時間も嗚咽しながら泣いた。
辛くて大泣きしても人前では作り笑いする。
それが貴方との別れの結末。
この心の穴、どうしたらよいのだろう。
彷徨う亡霊は心の穴をどう埋めたらいいか分からない。
“いつも違うベッド”が軋むことも、貴方がキスを落とすことも、もう今後ないのだから。
最初のコメントを投稿しよう!