会社にて

1/1
前へ
/27ページ
次へ

会社にて

 帰宅して冷静になって、俺は改めて自分のしでかした事の大きさにうちひしがれた。  人事に関わる取締役補佐に手を出したのだ。藤乃宮さん本人には謝罪したとはいえ、ただではすまないだろう。下手すると解雇もあり得るかもしれない。  こうして、いつも以上に憂鬱な月曜日を迎えるはめになった。 「おはようございます…」 「おい、どした?いつにも増して元気がないぞ?」  案の定、出社すると山内さんに指摘された。 「いえ、大丈夫です。たぶん」 「たぶんて何だよ。気をつけろよ、最近寒くなってきたから」  山内さんに背中を軽く叩かれる。いつもだったら、こういう何気ないやり取りで気持ちを切り替えられるのだが、今日はそうもいかなかった。  昼休みもなるべく遭遇しないよう、自分の席でご飯を済ませた。  結局、月曜は人事からの連絡も上司からの呼び出しもなく終わった。ひとまずホッとしたが、まだ油断はできない。  終業後にふと、俺のスマホに通知が来ているのに気づく。メッセージアプリで、八城店長からだった。おそらく、会える日の連絡だろうと思い、開く。 「…!!」  しかし、その内容を見て、俺は思わず変な声が出そうになった。 〈第5章 終〉
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加