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「分かった、今行く。鍵はいらないんだな……?」
「はい。ドアの上に手が届けば開けられると思います」
不自然な点など微塵も無かった。至極自然な態度と頼みだった。俺は何も疑わず、いじっていた資料をまとめ、席を立った。そして生徒とともに教員室を出て、指導室のある2階へ降りていった。
「…………」
この高校はとにかく広い。都内の私立にしては規模が大きい。中高一貫の進学男子校だが、高校からも大分生徒を受け入れる。生徒はざっと2000人弱くらいだろうか。
いつも大勢で活気に満ちている廊下が、授業中はこんなにも静かだなんて。まるで別世界のよう。
(不思議だな……)
2階の角に差し掛かりながら、依然として上の空だった。曲がった先には既に……指導室のドアが見えていたというのに。
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