1579人が本棚に入れています
本棚に追加
一体彼は何がしたいのか。どうして鍵をかけた。指導室の使い方が分からないはずでは。次々と浮かんでくる疑問に眉を寄せる。
「どうしたんだ。なんで鍵を「俺あんたのこと嫌いなんだよね」
────………
は、
嫌い………?
さらっと放たれた悪口に戸惑う。
「っ……」
しかし、あまり時間を要さずに思考は再開された。自分で言うのも悲しいが、俺を好きだなんていうやつに出会ったことがない。だから逆の台詞には驚かなかっただけである。
そもそも俺は……この生徒のことを知らないんだが……まさか知らない人間にまで不快感を与えていたというのか。もしそうだとしたら、それはなんというか……重症だな……
けれど「自分を嫌い」ということが今の状況にどう関係しているのか分からなかった。嫌いなら何故近づいてくる……?
(まさかリンチ……!?)
いや、だが相手は俺よりずっと小さい。
うーん……分からないな。
記憶を遡って客観的に物事を見てみると、「うーん」などとほざいていた過去の自分をやはり数発殴り倒したい。
せめて何か聞け。その生徒に。
怒れ。どういうつもりだと。
しかしそんな未来の諭しも虚しく。あの時の俺はノロノロと状況把握に手間取っていた。
最初のコメントを投稿しよう!