前編 1.序章(五月視点)

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 余裕そうな笑みを憎しみの色に変え、しっかりとこちらに向き直った青年に、心外ながらも怯えてしまった。俺は、殺されるのか。26歳には……なれないのか……?  訳分からず、混乱極まる。とにかく身の危険を煽られ、部屋の奥へ後ずさってみたが、相手は何故か制服のボタンを開け始めていた。  なんだなんだどうすればいい。というか彼は何をしているんだ。何故脱いでいるのだ。 「ちょ…、おお、おい…、お、お、落ち着け…その…、とりあえず一旦、一旦、よく考えて──……!」  焦燥感いっぱいで後退する背が、最奥のパソコンデスクにぶち当たる。怨恨と言ったって様子がおかしい。ポケットにナイフでも隠していそうな雰囲気だ。 「は、早まるな…っ、俺なんか殺したって……時間と労力の無駄だぞ……!」 「……はあ? 殺す?」 「っ……」 「まあそれも悪くないけど……俺が本当にあんたに思い知ってもらいたいのは、  ――生き地獄だからね」
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