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授業が怠いのはいつものこと。中途半端に起きたまま考えごとをしているうち、やっと4限が終わった。
「………、………」
根暗教師が一礼し、のそのそと教室を後にする。最後に何か言っていたが、チャイムと同時に昼休みモードに突入した生徒たちの声が煩くて聞こえなかった。
俺には関係ない。飯だ飯。
伸びをして立ち上がり、気怠い足取りで廊下に出る。すると階段に差し掛かったところで、背中に重みを感じた。
「やあやあ大和くん! 今日も相変わらず男前だねぇ!」
「っ……」
週初めからハイテンションで絡んでくる金髪の男は、佐久間瑛斗。中高ずっと同じクラスで、俗に言う腐れ縁。とにかく騒がしくてチャラいが……まあ、悪い奴ではない。
「てめぇは月曜から元気すぎんだよ……薬でもキメてんのか……」
「そこは『佐久間、お前こそ男前だよ』だろーがよ」
“馬鹿”
この言葉の組み合わせは、多分こいつのためにある。
「うっせぇ。お前も購買か」
「そー! 今日行きにコンビニ寄んの忘れたんだわ」
他愛のない話をしながら購買の入り口をくぐれば、普段の昼飯争奪戦からは想像もつかないほど空いていた。基本的に力づくで行かないと買えないのだが、この日はまったく問題なかった。
適当に選んだ惣菜パンとパック飲料を片手に、二人揃っていつもの空き教室へと向かう。ロータリーを抜け、また校舎に戻って、2階に上がり……
「は〜あ……」
バカ広い中央広場にクソ長い廊下。土地の狭い都心に佇んでいるくせに、とにかく全てが大規模すぎる。月曜の昼からこの距離を突破するのはなかなかに辛かった。
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