2-1.指導室(大和視点)

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 授業が怠いのはいつものこと。中途半端に起きたまま考えごとをしているうち、やっと4限が終わった。 「………、………」  根暗教師が一礼し、のそのそと教室を後にする。最後に何か言っていたが、チャイムと同時に昼休みモードに突入した生徒たちの声が煩くて聞こえなかった。  俺には関係ない。飯だ飯。  伸びをして立ち上がり、気怠い足取りで廊下に出る。すると階段に差し掛かったところで、背中に重みを感じた。 「やあやあ大和くん! 今日も相変わらず男前だねぇ!」 「っ……」  週初めからハイテンションで絡んでくる金髪の男は、佐久間(サクマ)瑛斗(エイト)。中高ずっと同じクラスで、俗に言う腐れ縁。とにかく騒がしくてチャラいが……まあ、悪い奴ではない。 「てめぇは月曜から元気すぎんだよ……(ヤク)でもキメてんのか……」 「そこは『佐久間、お前こそ男前だよ』だろーがよ」  “馬鹿(うるさい)”  この言葉の組み合わせは、多分こいつのためにある。 「うっせぇ。お前も購買か」 「そー! 今日行きにコンビニ寄んの忘れたんだわ」  他愛のない話をしながら購買の入り口をくぐれば、普段の昼飯争奪戦からは想像もつかないほど空いていた。基本的に力づくで行かないと買えないのだが、この日はまったく問題なかった。  適当に選んだ惣菜パンとパック飲料を片手に、二人揃っていつもの空き教室へと向かう。ロータリーを抜け、また校舎に戻って、2階に上がり…… 「は〜あ……」  バカ広い中央広場にクソ長い廊下。土地の狭い都心に佇んでいるくせに、とにかく全てが大規模すぎる。月曜の昼からこの距離を突破するのはなかなかに辛かった。
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