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「くそ………っ!」
既読スルーの時点で探し出そうとしなかったことを後悔しつつ、長い廊下を全力疾走した。授業中ゆえに静まりかえったそこは、まるで知らない世界のようだった。
とにかく目指すは指導室。たしか棟は違うが空き教室と同じ2階だったはず。長いA館廊下を走り切ると、今度はB館へと繋がる渡り廊下を駆け抜けた。そしてやっと左を向けば、その一番先に──……
「っ……!」
乱れる息を整え、見えるドアめがけてまた走る。
「ああっ、畜生っ……!!」
頼むから派手にやられまくってんじゃねぇぞっ
嫌だった。
平穏な日常がヒビ割れるのは、揺らぐのは。
何故かどうしようもなく怖かった。
だから待ってろ。
あと少し。
少しだから────
指導室までの距離が2mほどになった時、思いきり右足に力を込めた。そしておそらく鍵が掛かっているであろうドアノブを、躊躇なく蹴り壊した。
(早くしねぇと…っ……)
早く俺たちの友人を、冬馬を助けなければ。中に入って、ボコっている連中を止めなければ。
無我夢中で腕に力を込め、視線をあげる。……大丈夫。数人殴り倒す用意は出来ていた。
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