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「………………」
ピンチに陥って、やっと呆れる。自分の頭はなぜこんなにスロー回転なのかと。
まずいというのは分かるのだ……なんとなく。だがいつもその詳細が把握できない。目まぐるしく進行する状況に思考回路が追いつかない。だから解決できない。これは自分の最大の短所であろう。本当によく教師を始めたと思う。
こんな風に心の声だけだと、「死ぬか生きるかの瀬戸際に、なに呑気に自己分析しているんだ」と叱咤されてしまいそうだが、ちゃんと抵抗を試みたことを忘れないでほしい。結果的に逃れられなかっただけだ。
がっちりホールドされた右腕が痛すぎた。おかげで振り解けないどころか、もう右にしか神経が向かない。この少年、可愛らしい見かけにそぐわず、握力は化け物並みである。
「ちょっと何逃げようとしてんのカス。俺握力結構強いんだからね? 体力テストで校内5位になったことあんだよ? 暴れたら潰すから」
「こっ……」
校内、5位…、校内、5位、だと……?
2000人の男子の中で、上から5番目の握力……っ、駄目だろう……それは本気で潰される。事実すでに腕が壊れそうだった。
「なぁ、落ちつ…うッ!? 痛ぇっ!」
落ち着けと言おうとしただけなのに、気に触ってしまったらしく全力で握られた。多分、折れた。
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