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「っ………」
何だ。
今、何が起こった。
「……………」
チカチカ点滅して前が見えないので、状況が飲み込めない。常日頃当たらず触らずの精神で生きてきた。そんな暴力沙汰とは無縁の自分には、いきなりハードルが高すぎる展開でついていけない。
あまりの衝撃で首でもはねられたのかと思い、自分の顔に手を持っていく。
「……、………」
あぁ、良かった。届く。どうやらまだ繋がっているようだった。
首の安否が確認出来たところで、だんだんと視界が鮮明になっていった。そして何かが左頬に激突したのだと理解し始めた。……物凄かった。先程の爆音と怒号の主だろうか。
斬首と錯覚するレベルの一撃を食らわすなんて、一体どんな形相の化け物なのか。
「………………」
衝撃の根源が何なのか確認する為に、くらめく頭を持ち上げると、そこにはどこか既視感のある顔が。
こいつ、どこかで……
見たことあるような………
俺は今この青年に殴られたのか……?
そう、相手の顔をぼんやり見つめる。
「………………」
顔はなんとなく認識できるが、誰なのかが思い出せない。誰だ……。
しかし相手が何者か思い出してる場合でもなかった。一刻も早くショートした頭を再起動させ、発言しなくては。だってまずい。未知の相手は尋常じゃないくらいの殺気を放っていた。
『待て。俺は何もしていない』
慌てて言おうとしたのだが、鈍間な俺は間に合わなかった。
そして残念ながら、記憶がここで途絶えてしまっている。だからこの後、再度意識を取り戻すまでの数時間の間に何があったのかは、俺からは説明のしようがない。
むしろ教えてほしい。
いや、切実に。
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