2-2.指導室(五月視点)

6/17
前へ
/810ページ
次へ
「っ………」  何だ。  今、何が起こった。 「……………」  チカチカ点滅して前が見えないので、状況が飲み込めない。常日頃当たらず触らずの精神で生きてきた。そんな暴力沙汰とは無縁の自分には、いきなりハードルが高すぎる展開でついていけない。  あまりの衝撃で首でもはねられたのかと思い、自分の顔に手を持っていく。 「……、………」  あぁ、良かった。届く。どうやらまだ繋がっているようだった。  首の安否が確認出来たところで、だんだんと視界が鮮明になっていった。そして何かが左頬に激突したのだと理解し始めた。……物凄かった。先程の爆音と怒号の主だろうか。  斬首と錯覚するレベルの一撃を食らわすなんて、一体どんな形相の化け物なのか。 「………………」  衝撃の根源が何なのか確認する為に、くらめく頭を持ち上げると、そこにはどこか既視感のある顔が。  こいつ、どこかで……  見たことあるような………  俺は今この青年に殴られたのか……?  そう、相手の顔をぼんやり見つめる。 「………………」  顔はなんとなく認識できるが、誰なのかが思い出せない。誰だ……。  しかし相手が何者か思い出してる場合でもなかった。一刻も早くショートした頭を再起動させ、発言しなくては。だってまずい。未知の相手は尋常じゃないくらいの殺気を放っていた。 『待て。俺は何もしていない』  慌てて言おうとしたのだが、鈍間な俺は間に合わなかった。  そして残念ながら、記憶がここで途絶えてしまっている。だからこの後、再度意識を取り戻すまでの数時間の間に何があったのかは、俺からは説明のしようがない。  むしろ教えてほしい。  いや、切実に。
/810ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1581人が本棚に入れています
本棚に追加