2-2.指導室(五月視点)

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 ───────…………  しばらく寝っ転がって聞いていた。正確には、身体が動かないのでそれ以外何も出来なかった、だけである。本当に身動きがとれず、思考しか動かせなかった。  たしか…あの後俺は言いかけて、また殴られたのだろう。今は何時だ。  小柄な生徒はどうしたのだろうか。俺を殴った奴はもう何処かへ去ったのか。6限の授業は大丈夫なのか。  そんなふうに不安ごとばかり考えていると、やっと右目だけ開けることが出来た。 「─────………」  白い天井が見える。首が動かないので、眼球だけ動かして辺りを見回してみる。すると視界に入ったのは、椅子や資料、本棚、パソコン……  ……ああ、俺はあれからずっと指導室に転がっているのか。風の他に音は聞こえないので、他の人間が出ていったことを悟った。  もう一度目を閉じて考える。  「痛い」という感覚はないのに、身体は動かない。死ぬのだろうか。今時死因が殴殺だなんて笑えないが、花畑が見える気がしなくもない。精神的に。  一体俺が何をしたというのだ。いくら嫌いだからって、どこが嫌いなのかくらい言ってくれないと改善のしようがない。何の説明も無しにいきなりこれは……あんまりじゃないか。  くそ、暴行罪で訴えてやる。もし花畑コースを回避出来たら、絶対に訴えてやる。  理不尽さに怒りを噛み締めつつも、結局その後30分くらいは動けなかった。しかしどうやら死なずには済んだらしい。徐々に感覚が戻ってきて、デスク脚を頼りに立ち上がった。自分、こんなに生命力強かったのかと感心してしまった。  そして、頭上にある時計を確認すると。 「えっ………」  既に17時を過ぎていた。つまり意識が戻ってからの30分を含め、約3時間強伸びていたことになる。それは…かなりまずくないか…内臓、破裂とか、していないだろうな……… 「っっ………」  いやしかし、吐血もしていないしそれはないはず。一瞬ヒヤリとしながらも、なんとかプラス思考で踏ん張った。  ……にしても授業の入っていた6限に間に合わないどころか、もうすぐ最終下校時刻になってしまいそうだ。丸々すっぽかしてしまった授業を気にかけ、ため息を吐く。  探されてなどいなかっただろうか…  非常に気になるが、とりあえず教員室に戻る。そして病院に行く。そう計画し、立ち上がった。
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