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1階に着き、壁に寄り掛かりながら待った。数分と経たないうちに彼は戻ってきた。
「先生…っ!」
走ってきたせいで息が上がっている。そんなに急がなくていいと言っておけば良かった。あと……
「…………?」
何故か分からないが、さっきまでのジャージ姿ではなく私服に変わっていた。少し速すぎな気が……一体どこで着替えてきたんだ。もしや帰るところを邪魔してしまったか。
「新名先生! 階段降りられたんすか!? 大丈夫でしたか!?」
「………はい。こちらこそ…お帰りのところすみません、本当に助かりました。ありがとうございました……」
「俺後輩なんですから気にしないでください! さ、行きましょう! つかまって下さい!」
「いえいえ、ここまでで十分ですよ」
「……え……、もしかして俺、迷惑ですか?」
……────は?
先程までの威勢は何処へやら。突然しゅんとする相手に戸惑ってしまった。
「や、あの…そういう、訳じゃなくて、君の方こそ…迷惑なのでは、と思いまして………」
「じゃあ俺が迷惑じゃないならついていってもいいってことですか?」
「…………へ?」
助けてもらった手前、慌てて弁解した。が、予想外の返事が返ってきたので間抜けな声が出た。
そんなに瀕死に見えるだろうか……? たしかに見かけこそボロボロではあるが、3時間くらい伸びていた割に、歩けるし……
親切なのは有難い。『人付き合いに慣れていないから、ついて来られると余計に疲れる』なんて死んでも言えない。いいや、常識的に考えて言ってはいけない。
「っ…………」
こちらは助けてもらっている側なのに、今の時点でもう何回も断っていて申し訳ない。彼の真摯な態度から考えても、仕方なく俺に構っている訳ではなさそうだ。
勿体無いし…ここはお言葉に甘えてみるか……
「本当に、すいません……ありがとうございます」
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