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深夜のラーメン屋にて
「しゃーせぇ〜!!お兄さんお好みは?」
「油少なめで。」
どこの町にもあるような、家系ラーメンの店
俺は仕事終わりに1人、ラーメンを食べていた。
「しっやっせぇ!!おひとり様ですかぁ!」
また来店。もう日付をまたぐ時間だというのに割と客は多い。
若い頃は麺固め、油多めなんて気軽に注文していたが、アラサーの胃はもうそんなカスタムを許容できない。
今はもっぱらラーメン並盛油少なめ、たまに味玉である
「お姉さん!お好みはぁ!!」
「メンカタ、油多めで。」
若い店員の必要以上にテンションの高い声が店内に響き渡る。
大手企業に就職し、舞い上がっていたのもつかの間、すぐに大量の仕事に追われ、ストレス社会人の仲間入りをはたした。
ようやく仕事が安定してきた3年目、彼女ができ、そのままトントン拍子で結婚もした。
部長のツナマヨおにぎりを尻目に愛妻弁当を食べ、夜には妻の手料理がある新婚生活も今は昔。
子供ができ、妻はしっかり「母」になった。
俺もそこそこ「父」はやれている自覚はある。子供は可愛いし、日曜日の家族サービスもお手の物だ。
しかし平日は残業続きの日々、繁忙期は家に帰らないこともしばしば。
ついに妻も愛想をつかし、昼飯は部長と並んでおかかおにぎりを食い、夜はご覧の通りラーメン。
これが安定した日常なのはわかっている。
ローンは残っているが、夢のマイホームも購入した。これが多くの人が羨む「普通の日常」なのだろう。
しかしいつも、まるで夢かのように思い出すのは、決して裕福ではなかった、大学生時代のひねくれ者の彼女との日々である。
特にこうして夜中にラーメンをすすっていると、毎回のように思い出すのだ。
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