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再会
社会人になってすぐ、街中でばったり彼女に出くわした。
「ストレス社会の人間と喋ると幸福指数が下がりそうだわ」
そんな言葉を期待していた俺にとって、数年ぶりに再開した彼女の口からは予想外の言葉が飛び出した。
「久しぶりね、少し...喋らない?」
「君らしくないじゃないか、何か心境の変化でも?」
「私ってほら、ツンデレだから。それに心境は日々かわりゆくものよ、環境もかしら」
「その口調は相変わらずなんだね、俺が知っている限り君はツンツンしているだけだけどね」
「たった9ヶ月付き合っていただけで知ったような口を聞かないでもらえる?」
「驚いたよ、君が交際期間を覚えているなんて」
「残念ながら私は色恋沙汰はあなたで途絶えているの、嫌でも覚えているわ」
付き合っていた頃のようなテンポで会話が進んだ。懐かしくて、どこか寂しくもある会話だった。
そんな感傷に浸っていると彼女は、声量を落として、それでも確かに聞こえる声で、続けた。
「あなたで始まって。あなたで終わったわ」
自虐的なニュアンスを含んだその言葉は、別れを切り出した俺を責めているようにも感じた。
どう反応すればいいのかわからず、小洒落たバーにでもいこうかとおもむろに携帯を取り出したと同時に彼女は再び口を開いた。
「ラーメンでも食べに行きましょ、どこの町にでもあるような、身体に悪そうなラーメンが食べたいわ」
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