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ぼくの家、寄ってく?
「ぼくの家、寄ってく?」
店長の悪戯っ子ぽい微笑みに、俺はクラっとしてしまった。その言葉の意味、俺、深読みしすぎてないですよね…?
***
俺と店長は元々、バイト先が一緒だった。とあるカラオケ店の店長とバイトリーダーの仲。何故か店長が俺をしつこくドライブに誘ってきて、一緒に行ったのが運命の分かれ道。
以前から俺を好きだったと店長が言ってきたとき。
俺がもやもやしていたこの気持ちが「恋」だったんだとそのとき分かったんだ。それまでは単純に「兄貴」みたいな存在で「好き」なんだと思っていた。
でも店長から言われたとき、俺は鼓動が早くなって、顔が真っ赤になって、店長が…可愛く見えたんだ。もうそれって「恋」だろ、と解釈したらスッキリして。
今は店長が他の店に転勤になってしまったから毎日は逢えないけど、シフト休みを合わせてデートしている。店長の2シーターの愛車でドライブしたり、買い物したり。
はっきり言って男同士は気楽でいいなと思っていた。気を遣わなくていいし。でも最近はもやもやしていることがある。それは…
先に進めない…!いやこれは俺の意気地なしさが出ているかもだけど。付き合って3ヶ月もしてるのに、キス(しかも軽いヤツ)止まりだ。…店長はモヤモヤしていないのかなあ…。俺、店長で想像して一人エッチ、してしまってるんだけどな…
***
海の見える、評判のカフェに行ってみようと子供のようにはしゃいだ店長とのデート帰り。今日も軽いキスを車内で交わす。この時間のキスはもう「お帰りのキス」だ。後は帰路に着くだけ。んー、やっぱりさみしいな。
「さ、帰ろうか!」
店長がハンドルを持ち、車を発進させる。帰るんですよね…そうだよね…いつも店長は俺を家の近くまで送ってくれる。今日もあの角を曲がれば家に着く。
だけど、店長は角を曲がらずにそのまま直進した。
「…?」
俺は店長のほうを向き、顔を見た時。少し笑いながら運転していた。そしてこう言ったんだ。
「ぼくの家、寄ってく?」
***
全然、店長は「清純」な恋人じゃないことを俺は知った。
玄関に入るなり、俺にキスしてくる。
「てんちょ…んう…」
今までの軽いキスなんかじゃない。俺の顎を強く掴まれた。苦しくて恐る恐る口を開けると、すぐに店長の舌が入ってくる。
「ん…」
ヌルッとした舌が、俺の舌をツンツン、と突く。絡めろ、ということか。舌を絡め合うと身体が熱くなってきた。
ってか、キャラ変わってませんか、店長!!
今までの店長はどちらかというとのんびりしていて、鈍臭くて、可愛くて…それなのに…!
店長は俺の腰に手を添えて長くキスを続ける。俺はもう腰が砕けそうだ。
ようやく唇を離した時、店長が俺をじっと見て微笑む。
「ごめんね、もう耐えられなくて」
「…へ?」
「Hしていい?」
単刀直入すぎて俺は爆笑してしまった。なんだ、店長もしたかったんじゃん。
「もちろん!俺、最近店長で想像して一人エッチしてたし」
「…ばか」
店長は真っ赤になって俺の頭をくしゃくしゃっとした。
「あとさ、相澤くん、「店長」はもういいよ。貴之って呼んでよ」
「…いきなり名前って、ハードル高い」
「僕も名前呼ぶからさ。幸樹」
名前を呼ばれた瞬間、背中がゾクっとした。なんだこれ!強く腰を引き寄せてもう一度キスされた。
「いい思い出作ろうよ」
ベッドの上で腰掛けて深いキスをしながら服を脱がされた。
「…手際いいね」
「そりゃあまあ、オトナですから」
そう言うと、店長…、貴之は首筋を舐めてきた。
その舌が、ゆっくりゆっくり移動を始めて耳朶も攻められる。さっきからゾクゾクが止まらない。
「う、わあっ?」
不意に乳首を舐められて変な声を出してしまった。
「初めて、だよね。こんなとこ舐められるの」
「当たり前じゃないですかっ」
ふふと笑いながら、まだ舐めながら俺の身体をベッドへゆっくり押し倒す。
「じゃあここも?」
右手でズボンの上から俺のソレを弄る。ちょ、ちょっと!
「…あ、でも女の子に使っちゃったかな」
「〜〜〜っ」
下着の中に手を入れてギュッと握る。
「…女の子にも、使って、ない」
こんなとこでバレるなんて!どうせ童貞だよっ!
結局、下も全部脱がされた。んでなんで自分は着たままなの。んでもって…
「ん…っ、あ…」
自分の声だなんて認めたくない、けど…気持ち良くてついつい声が出てしまう。
貴之が俺のソレを口の中に入れた時はものすごく焦った。まさかそんなこと、してくれるなんて!
それから舐められながら扱かれながら、気持ちよくてどんどん自分のが大きくなってきたのがわかる。
「や、あ…っ、も…っ」
先っぽをツンツンされたり棒を全部口に含んだり。とにかくなんでこんなに上手いのか、気になったけどもうそれどころじゃなくて。
「も、出そう…」
「いいよ、出しなよ」
そういうと、貴之が強く吸った。
「あ、あっ、ああ…ッ!」
俺は思い切り貴之の口の中に、出してしまった。
それからはもう自分でも訳がわからないくらい、さかってしまった。もう止まらなくて。
貴之がさっきしてくれたように、今度は俺が舐めて。
かなり大きくなった頃に突然貴之は俺の髪の毛を掴んで、自分の腰を振ってきた。
「ん、んんっ!んー!」
えずきそうになりながらも、貴之が気持ち良さそうにしてる顔を見てまたゾクッとした。流石に貴之が口の中に出したときには咳き込んでしまい、我に返った貴之が、ごめん、と謝ってきた。少し強引な貴之に、ゾクッときたなんて俺は多分、Mなのかもしれない。
「ゆび、入れていい?」
俺は四つん這いになって、貴之が後ろから声をかけてきた。何でもかんでも単刀直入に聞く癖があるのか、恥ずかしげもなく聞いてくる。
ぼんやりした頭で俺は頷いて、ふと気づく。
「俺、入れられる方!?」
そう聞いたときにはもうローションをつけた指をゆっくり。入れてきた。
「いっ…!てぇ!」
思わず叫んでしまった。そりゃそうだろ、元々入れるようになってないんだから。
「貴之、いたい、やだあ…」
「すぐ良くなるから、我慢して」
どんどんSキャラになっていく貴之。ゆっくりゆっくりと慣らそうとしてくれている。確かにさっきよりは、痛く無くなってきて…
チュクチュクと音が聞こえ始めて痛みが気持ちよくなっていく。その頃には指が増えているようだった。
「は…あっ、あ…ッ」
「だいぶ、よくなって、きた?」
答えの代わりに、頷く。それを合図にして貴之のものがピタッと当てられてきた。ドクンと胸が締め付けられた。もしかして….
「入れちゃう、よ」
「ちょ、ちょいまっ…あ、あああっっ!」
ものすごい圧迫感に声が出てしまう。
「痛い?」
「だ、大丈夫」
ゆっくり動くからと言って貴之はそれを動かし始める。
「…うっ、くっ…あッ」
出し入れをしながら、乳首と俺のモノを触ってきてさらに辛くなってきて頭が霞んできた。
もうどうにでもなれ。もっともっと欲しい。もっと…
「たかゆ…き」
そう言った途端、ズルリと繋がってたそれを抜いた。
「…?」
「こっちじゃ、顔見れないから…」
俺の体をゆっくりと仰向けにして、正面からまた入れる。これなら顔が確かにみえるけと、繋がってるとこまで見えて今更ながらに恥ずかしい。淫らな音と、自分の声と、たまに聞こえる貴之の声。
だんだんとそれらがどうでもいいくらい、余裕がなくなっていく。
「あっ、あっ…い、い…っ、たかゆきっ…!」
「幸樹、かわい…っ」
「んんっ、あっ」
もう止まらない。あと少し、もっと、あと少し…!
「イっちゃう、よ!…あああっっ!」
ビクビクっと、身体が痙攣を起こして俺はソレをシーツにぶちまけて。貴之は俺の中にぶちまけた。
それから数時間後。あのあとはもうおかしくなるくらい、やってしまった。そして泥のように眠って、今に至る。朝の光がカーテンの隙間から入ってきた。
初めての夜でこんなにさかるなんて。
いや、初めての夜だからさかったのかなあ。
「…絶対Sだよね、貴之は」
「幸樹が嬉しそうだったからさあ、はい、ポカリ」
ベッドでぐったりしてた俺に冷蔵庫からポカリを持ってきてくれた。もう名前で呼ぶことも、呼ばれることも抵抗がなくなった。こんな風にしてだんだんと長い時間を過ごせられるのかな。持ってきてくれたポカリを飲みながらそんなことを考える。
「何、ぼやっとしてるの?」
貴之が俺の頬っぺたをつついてくる。優しい店長の顔。さっきまでの余裕のない、見たことのなかった貴之の顔。
どちらもたまらなく好きだ。
「教えてやんない」
「えっ、何?なに?」
初めての夜が明けると、甘い甘い朝が待ってるのだ。
【了】
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