統一への始まり

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統一への始まり

馬車に揺られ私はある所に向かっていた。 魔法があるこの世界でも移動する為の魔法は発達しておらず出発してから10日間経っていた。 「ハーツ王よ、到着いたしました。」 配下からの声を聞いて外を見る。 ようやく到着した目的地は、薄暗い森でその中に豪華な屋敷が建っていた。 こんな森の中に不釣り合いかだと思ったが不思議と周りの木々と馴染んでおり、ここにあるのが自然なことのように思えてくる。 一国の王である私がここに来たのはある者に会う為である。 少し前、我が国に手紙が届いたのだがその手紙に驚かされた、開いたときに目の前に突然人が現れたのだ、そしてこう私に告げる。 (ハーツ王よ突然の手紙をすいません私は全てを知る者、名前はシェリノ。 なお貴方の目の前に私がいると思うが、これはホログラムという技術で本物の私ではありません。 手紙と一緒で貴方の質問に答えることは出来ないので聴くだけにして下さい。 この手紙の本題ですが私は貴方が欲しているものを知り。 貴方の国が『世界統一』するのに必要なものを知っています。 私の力を使えば必ず成すことができるでしょう。 貴方が直接私に会いに来て試練をクリアしたのであれば貴方の力になることを約束しましょう。 地図は同封してあるでは会える日を楽しみにしています。) そこでそのホログラムとかいうものは消えてなくなった。 「何故我が国の目的を知っているのだ、何故今なのだ?」 思わず呟いてしまった (私は全てを知る者、強いて言えば世界の意思とでもいいましょうか) 返事が無いと思っていたが声だけだが返ってきた、全てを知る者と言っていたので本当は質問に答えることもできたのであろう。 私は驚きと興奮で震えたそしてこの者に会いに行く事を決意したのだ。 この者を我が国に引き込む事が出来たなら先代からの悲願『世界統一』が叶うとそしてもう一つの願いも...だから反対する部下を押し切りここに来たのだ。 「どうぞお入り下さい。主人様がお待ちしております。」 到着した私をこの屋敷の執事であろう男が案内する。 急な来客のはずなのにずいぶん手筈が良い、まるで私が来るのを分かっていたかのよう....いや多分分かっていたのだろう。 大広間に案内された私をシェリノが待っていた。 「はじめましてよく来ましたねハーツ王」 「これはこれはハーツ殿、何の用ですかな?シェリノ殿には我輩の方が先に会っていたのだよ、大人しく彩国(さいこく)に帰っては如何ですかな」 そしてもう1人我が国の隣国で長年争っている機国(からくりこく)の王マウンドがいた。 「何故お主がここにいるのか知らんが私がここに通されたということはまだ試練をクリアしていないのであろう」 「相変わらず鋭いな我輩は少し前にここに着いたばかりなのだよ、これからシェリノ殿と話があるのでハーツ殿には席を外していただき....」 「そこまでです、私は貴方達に同時に試練を受けていただきたいので少し調整させていただきました」 「「なっ⁉︎」」 2人して言葉が詰まる 調整とはおそらく手紙の届く日時のことだろう。 こうなると国に手紙が届いて私達が来るまでの時間を分単位で予想できるという事に他ならない、まるで神業である。 おそらく隣のマウンドも同じ考えに達してるであろう。 「して試練とはどのような事をすればいい?」 私の問いにシェリノは笑みを浮かべて答えた 「貴方達に課す試練は贈り物や技能なんでもいいので私を感動させることです、達成した国の力になることをここに誓います」 「なるほど我輩とハーツ殿で競い先に感動させた方がシェリノ殿の力を獲るということですな」 「あ、そうそう暴力や殺生は禁止ですからね。 もっともこの屋敷内に入った時点で封じていますが、それとこれを」 とそれぞれ袋を渡される長さは2メートルほどあり、口は直径2メートルぐらい広がる大きなものだ。 「これは?」 「それで必要な物を自国から取り寄せてください、念じれば来ますので上手く使って下さい、生き物も大丈夫ですよ、なおこの屋敷の敷地外には持ち出せないので注意してくださいね」 普通に伝説級のマジックアイテムを渡すシェリノ殿を前にしてもはや2人は言葉を失っていた。 「では1時間後にこの大広間で」 シェリノの言葉でそれぞれにあてがわれた控え室に案内された。 しかしこの屋敷に着いてから私のシェリノに対する評価は上がり続けている。 この争奪戦は我が国が絶対にものにしないといけない、機国のマウンドがいる以上ここでの敗北は長年続いた戦争の敗北を意味することになる。 * * 1時間後大広間に再び集まった私とマウンド、最初のアピールが始まる。 「それでは我輩からいかせてもらう、我が機国は高い技術力を誇り、素晴らしいマジックアイテムも多数ある今回はその一部をお見せしよう」 そう言うとマウンドは袋から風呂敷ような布とぶどうを取り出した、しかしそのぶどうは粒は小さく色も悪くしっかり成長してない様に見える。 マウンドは机の上にぶどうを置くとその上に布を被せる、そして魔力を込めると布が光り輝く。 1分ぐらいで光が収まり布をどけるとそこには大粒のみずみずしい色のぶどうがあった。 「このマジックアイテムは果物の品質を上げる効果があるみたいだね、確かにすごい事だけど魔力消費も大きいみたいだし今一歩ですね」 「しかしこれは作物が十分育たない我が国を支えてる素晴らしいマジックアイテムでこのぶどうも我が国では立派に育った方なんだが」 確かにマインドが呟くように素晴らしい効果だと思うが、それよりも機国では農業に問題を抱えているのか。 それより我が国の番だ。 私は袋から数々の果物や野菜を出した、その果物や野菜はとても大きく艶があり一目見ただけで素晴らしい品質である事がわかる。 「彩国からはこの果物達、この色彩豊かな色々な果物や野菜が国内で自然に取れるのが我が国の自慢で我が国の名前が彩国となった由来である」 偶然にも果物を出すことが被ったがあちらはマジックアイテムを使って品質を上げたが明らかにこっちの果物の品質の方が良いこの勝負もらった。 「確かに素晴らしい果物ですね、ですが品質がいまいちみたいですね。一回戦が終わりましたのでここで取れた果物でおやつタイムにしましょうか?」 シェリノがそう言うとメイドが果物が載ってるトレイを持ってきた、我が国の果物でだめだったので予想できたが明らかに果物の出来がおかしい、果物とは輝くことが出来るのかという品質だったのだ、そして味も抜群に上手い....彩国の果物の完敗である。 「ではまた1時間後に大広間で」 2回戦 我が彩国は毎年祭りの際に選抜される舞姫の素晴らしい踊りを披露。 対して機国は祭りの時にする花火というものを打ち上げたがどちらもシェリノを感動させるまでにはいたらなかった。 正直言って花火を見たときの綺麗さに目を奪われ負けてしまったかと思ったので助かった。 その後も3回戦 彩国:屈強な戦士の演武× 機国:戦争で使う高性能武器× 4回戦 彩国:国1番の美男、美女× 機国:国1番の知識を持つ男× その後も何回か2国の自慢の物を披露するがシェリノを感動させるまでには至らない。 驚くべきことだが披露するたびに機国側が出すジャンルと同じか似たようなものであり決まって彩国側は豊富な自然資源と多くの人口を生かしたもの、そして機国側は知識と技術を生かしたものだったのである。それはお互いの国に必要なものを相手国がもっている事を意味していた。 結局初日では決まらなかったので次の日に勝負は持ち越す事になった、そこで今夜私はある事を行動に移した.... * * * 朝になり大広間に集まった私達、目の前にはシェリノがいる。 「昨日は残念でしたね、今日こそ私を感動させて下さいね」 と今日の戦いの開始を告げるここで私は口を開く。 「シェリノ殿。私ハーツとマウンド王はこの試練を辞退しようと思う」 「何故ですか?」 「シェリノ殿には私達の国のあらゆるものを見せても感動させる事が出来ないと判断した」 「昨日の我輩達の用意したものは全て自慢のものだった。それが駄目なら他の国にシェリノ殿を取られる事も無いと我輩達は判断したのだ」 「我が彩国と機国は平和条約を交わしこれから交流していく事を昨晩話し合って決めたのだ」 昨日見た機国の技術は素晴らしかった、そう昨晩私は条約の話しをしにマウンド王に会いに行った。機国からはその技術を彩国からは作物や人をお互いに不足しているものを提供し合い手を取り合えば必ずお互いの国が発展していけると提案しに行ったのだ。もっともマウンド王も同じ考えだったみたいで廊下でばったり会ったのはびっくりしたが。 「そこでシェリノ殿には私達が交わすこの条約の見届け人になっていただきたい、どうかこの願いをきいてくれまいか?」 しばらく沈黙していたシェリノの反応を伺う。 「素晴らしい!!素晴らしいですよ貴方達の判断の速さ、そして行動力そして何より国を良くしたいという思い私は感動しました!」 「では我輩達の願いをきいていただけるのか?」 「貴方達は私を感動させました力になりましょう。まずは貴方達の本当の願いを叶えてあげましょう、そして私からの提案もあります」 そう言うと床に魔力を込めるすると魔法陣が浮かび上がり光が溢れる、やがて光が収まると魔法陣があった場所に男女が立っていた 「マイン!何故こんな所に我輩はこの半年ずっと探していて最悪の状況も考えてたんだぞ、我が息子よ」 私より先にマウンドが男の方に駆け寄り抱きしめる 「無事で良かったピュアよ、私が悪かった父親らしい事を何もしてやれず争いばかりに行って、母を亡くしたばかりなのにろくに側に居る事もしてやれなかったな、こんな私が嫌で出て行ったかと思ったぞ本当にすまなかった」 「いいえ私こそ勝手に飛び出してごめんなさい。お父様こそ最愛の母を亡くされたのですその心の傷を2人で乗り越えるべきでしたわ」 私も娘ピュアと抱き合い再会を果たす 「彼は半年前の戦争で傷ついてここに辿り着いたから傷の治療が終わりまでと保護していました、彼女は食料調達していたメイド達がたまたま森の浅い所で迷っていたところを保護しましたこれも半年前ぐらいですね」 「シェリノ様は命の恩人ですわ、勢いで城を飛び出して森で迷ってしまい保護されなかったら飢え死ぬか獣に食べられるどっちかでしたわ」 「我も戦争でどこに向かっているのか分からなくなり傷ついていて屋敷を見つけそこで気を失ったんです。ベッドの上で目が覚めた時には生き残ったと涙を流しましたよ、本当感謝しかないです」 2人が保護された経緯と感謝を告げる 「シェリノ殿感謝するここ半年懸命に捜索していたのだか見つからず半ば諦めかけていた娘とここで会えるとは」 「2人を保護したのは本当にたまたまでした王族というのも驚きましたよ、それはそうとマイン様とピュア様は出会ってからとても意気投合されたようで 手を取り合って生活していました、それにピュア様のお腹にはどうやら新しい命が宿ったみたいでして」 「そうなのかピュア!」 私は思わず声を上げてピュアのお腹を見るすると少しだが膨らんでいた 「そこで提案ですが2国間を条約で結ぶのではなくいっそ1つ新たな国にしてしまうのはどうでしょうか? そうすればこの大陸の他の国もおいそれと攻めてこれなくなります。 これから調整を進めていきマイン様とピュア様の子供が生まれた時に国民に一緒に発表するのです」 「それならば我輩から1つお願いがある、摂政として新しい国を正しい方向に導いてくれまいか、そしたらこちらからは反対はしない」 「私からもお願いしたい」 「残念ですが私はここから離れることは出来ないのでそのお願いは聞くことができません、後継者が育つまでマイン様が王として治めるのが筋だと思いますよ。ですがこのマジックアイテムを渡しますこれを使えば離れていても私と通話する事ができますので何か決断するときに迷った時など力になれると思いますよ」 残念ながら私達の願いは聞き入れてもらえなかったが、いざとなればシェリノ殿の協力を得られることでこの場は収まった。 シェリノ殿の転移陣で2国間そしてこの屋敷までの移動が苦もなく行われ、国家の合併に関する打ち合わせが進んでいった。 * * * 後日強国が誕生した。 彩国の豊富な資源と人口。 機国の高度な技術。 この2つを融合させ大陸で実力が突出したこの強国は短時間で犠牲者も少なく大陸統一を成し遂げた。 国の名は試練を通して2つの国が手を取り合うことを気付かしてもらい、大陸統一においても大切だった1人の賢者のファミリーネームからもらいこう名付けられた.....全知国ブングウ 「以上が我らが国ブングウが出来た由来じゃよ」 「おじいちゃんシェリノっていう人は男だったの女だったの?」 「そこら辺の資料が少なくてわからないんじゃ、 唯一はっきりわかっているのがブングウ・シェリノという名前だけで我が国が大陸統一を成し遂げた時にはいなかったことだけじゃな」 「じゃああれだね多分そのシェリノって神様だったのかも知れないね」 おじいちゃんと孫のたわいない会話が夜にふけていく。 終
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