60人が本棚に入れています
本棚に追加
はずだった…
はずだったのに、夜道と土地勘がないことが重なり遊歩道から出ることが出来ず、私はひたすら道に迷っていた。
街灯もない遊歩道で、やっと見付けたコンクリートのベンチに座る。
涼しさを超えて寒くなった夜空の下、夜景をただ見つめる。
今、別れたばかりなのに、思い出すのはショウのことばかり。
ショウが私に気持ちはないと分かってるのに、想いは溢れてしまう。
「ショウ…」
「ショウ、会いたいよ…」
「ショウ、大好きだよ…」
ショウを思うと涙が溢れ出してくる。
あの日、あんな出会い方をしなければこんなことにはならなかったのかな?
涙が零れないように夜空を見上げた。
顔を上げた私を、ショウが恐い顔で見下ろしていた。
「え?ショウ?何で!?」
驚いて、そのまま振り返った。
「何でじゃねーよ!勝手にふらふらほっつき歩いて、俺がどんだけ心配して探してたか分かんのかよ?」
「何で心配なんかすんのよ?もう別れたし、私がどうしようと関係ないじゃん!それに先にどこかへ行っちゃったのは、ショウの方じゃん?」
ショウは溜息を吐きながら、私の肩に上着を掛けた。
もしかして、上着を取りに行ってくれてたの?
「例え別れたとしたって、こんな夜に土地勘もないヤツを捨てて帰るほど、俺は薄情じゃねえよ?」
そう言うと、ショウは私の隣に座った。
ショウが来てくれてすごくほっとしたくせに、私はわざとらしく溜息を吐いた。
「そんな優しさいらないよ。別れたんだから放っておいてくれるのも優しさだよ」
「ふぅ~ん、そぉ~なんだぁ~」
ショウは疑り深い表情で私を見下ろしていた。
「私がどんな思いで別れたか、ショウには絶対分からないよ…」
「俺だって、何でフラれたか全然分っかんねぇよ…」
最初のコメントを投稿しよう!