ツキミという女

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 はずだった…  はずだったのに、夜道と土地勘がないことが重なり遊歩道から出ることが出来ず、私はひたすら道に迷っていた。  街灯もない遊歩道で、やっと見付けたコンクリートのベンチに座る。  涼しさを超えて寒くなった夜空の下、夜景をただ見つめる。  今、別れたばかりなのに、思い出すのはショウのことばかり。  ショウが私に気持ちはないと分かってるのに、想いは溢れてしまう。 「ショウ…」 「ショウ、会いたいよ…」  「ショウ、大好きだよ…」  ショウを思うと涙が溢れ出してくる。  あの日、あんな出会い方をしなければこんなことにはならなかったのかな?  涙が零れないように夜空を見上げた。  顔を上げた私を、ショウが恐い顔で見下ろしていた。 「え?ショウ?何で!?」  驚いて、そのまま振り返った。 「何でじゃねーよ!勝手にふらふらほっつき歩いて、俺がどんだけ心配して探してたか分かんのかよ?」 「何で心配なんかすんのよ?もう別れたし、私がどうしようと関係ないじゃん!それに先にどこかへ行っちゃったのは、ショウの方じゃん?」  ショウは溜息を吐きながら、私の肩に上着を掛けた。  もしかして、上着を取りに行ってくれてたの? 「例え別れたとしたって、こんな夜に土地勘もないヤツを捨てて帰るほど、俺は薄情じゃねえよ?」  そう言うと、ショウは私の隣に座った。  ショウが来てくれてすごくほっとしたくせに、私はわざとらしく溜息を吐いた。 「そんな優しさいらないよ。別れたんだから放っておいてくれるのも優しさだよ」 「ふぅ~ん、そぉ~なんだぁ~」  ショウは疑り深い表情で私を見下ろしていた。 「私がどんな思いで別れたか、ショウには絶対分からないよ…」 「俺だって、何でフラれたか全然分っかんねぇよ…」
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