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第7話
スーパーの店内はとても涼しい。ついさっきまで外にいたときの暑さが嘘のようだ。
目的の調味料コーナーに行くと、さすが5%オフというだけあって、調味料コーナーにはたくさんの人が群がっていた。人をかき分けながら何とか手を伸ばしてケチャップを取りカゴに入れる。
あ、ついでにオリーブオイルも買っておこう。これが結構高い。けれども健康にいいからと母親から聞いて以来、我が家ではオリーブオイルを使っている。樹くんの健康管理も私の役目だしね。
それから調味料コーナーを抜け出し、ほかに何か買うものが無かったか店内を見て回る。
「あ、あれいいな」
スーパーの出入り口付近に戻ってきたところで、夏バテ、熱中症対策コーナーにたどり着いた。塩分タブレットや冷却スプレー、冷却タオルが集積されているコーナーだ。
いくら会社内や自宅にエアコンがついているかといって、熱中症にならないわけではない。 樹くん、暑いの苦手そうだし、熱中症なんかになったら大変だし、この機会に色々と買っておくとしよう。
そうだな。まず一番大事なのは塩分よね。タブレット一袋……あ、でも一日二枚食べるとしたらすぐ無くなっちゃうし、三袋くらいいっとく?
あと冷却スプレーは……オフィスや外では使いづらいかもしれないから、冷却タオルにしようかな。あ、でも別にスプレーがあっても問題はないよね。
私の想像力が乏しいだけで、どこかで使う機会があるかもしれないし。二缶あれば十分かな。
冷却タオルは私も使いたいし、洗濯しなくちゃいけないから四枚あればいいかな。あ、でもこっちの首に巻くベルトタイプもいいな。
手に取ってみると、パッケージには水色の少し太くて長いベルトの写真があり、箱の裏にはそのベルトの中に保冷剤を入れて使うのだと書いてあった。
樹くんがこんなの首に巻いてたら……。
まるで……首……輪……。
って、いや、違う違う。何を考えているんだ私は。
たしかにそれは私得ではあるけれど、樹くんは童顔だから似合うだろうけれども、朝のスーパーの店内で考えていいことではない。
だがしかし、ちょっと見てみたい気はする。というか、考え出すと止まらない。
だいたいこれ、冷却用だし、熱中症対策だし、樹くんのためを思ってのことだし……あっても困らないし、通勤のときでもでも使えるし! 別に家にあったって問題ないよね!?
なんて考えながらそっと冷却ベルトを一箱だけカゴの中に入れた。結局、ケチャップとオリーブオイルと大量の冷却グッズを買って家に帰った。
その日の夜、夕食のオムライスを食べ終えた樹くんは、リビングで私が買ってきた大量の冷却グッズを物珍しそうに見ていた。
「最近はこんなのもあるんだ。これなに?」
「樹くん暑いの苦手かなと思って色々買ってみたの。それは冷却ベルト。保冷剤を入れて首に巻くタイプの冷却グッズだよ」
私は箱を開けて冷却ベルトを広げてみせる。それを樹くんは手に取ると、ためしにとさっそく首に巻き始めた。
まさかのこんなに早く見ることができるなんて思いもしなかった。
正直、全く使われなかったらどうしようかと思っていたけど、真っ先に手に取ってくれるなんてさすがだ。
いや、別に首輪に見えるからって、何かあるわけじゃないよ。やましい気持ちとか別にないよ。でも見てみたいものは見てみたいじゃない。
どんどん膨らむ妄想のせいで、口元が緩むのを必死で抑えながらその様子を見守る。
樹くんはベルトをとめて、テレビの横に置いてある鏡で自分の姿を見た。
「なんか、首怪我した人みたいだね」
そう言うとさっさとベルトを外し、入っていた箱に丁寧に入れ直した。
「そ……そうだね……」
首を怪我した人……って、そう言われるとそうにしか見えないじゃん!! 首輪と首を怪我した人じゃ大違いだよ!!
いや、別にいいんだけどね!? 何度も言うけどこれは冷却グッズだし!! 熱中症対策のために買ったんだし、そもそも首輪じゃないし!!
私は涙を飲んで、そっと冷却ベルトを自分の部屋の引き出しの奥に片付けた。
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