しょぼすけ太郎の挑戦

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しょぼすけ太郎には立派な名がある。左馬右衛門という、祖父がつけてくれた由緒正しい名前がある。しかし何をしてもしょぼいので、村人はみな彼を「しょぼすけ太郎」と呼んでいる。 稲を植えれば植えた先から横倒し、畑を耕せば畝はガタガタ、牛を使って耕そうと試みれば牛に蹴られて逃げられる有様だ。 その様を見て今日も村人は、彼に 「おーい、しょぼすけ太郎、今日もしょぼいなあ」 と声をかけて笑いながら去っていく。 そんな彼には、野望があった。地中深くまで潜れるドリル艦を造ることだ。 特撮モノではお馴染みの、あの切っ先のとがったドリルのついた地底艦だ。地中に潜ると土の重さでメカが潰れてしまうため、特撮モノに出てくる乗り物で唯一実際には作ることができないと言われている、あのドリル艦である。 今日も散々な畑仕事から帰ったしょぼすけ太郎は、部屋の片隅にドーンと存在感を放つそのドリル艦の制作に取り掛かる。 しょぼすけ太郎には、たったひとつ特技があった。科学である。地学化学物理学、どれをとってもピカイチのセンスの持ち主だった。その特技を存分に活かして、今日もしょぼすけ太郎はドリル艦を造り続ける。 「自重がこれで、土の重さがこうなると、装甲にはやはりこの素材・・・」 ひとりブツブツつぶやきながら、何年も何年も、こうして野良仕事から帰ると毎夜夢のドリル艦を造っていった。
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