第2章

4/16
6283人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ
 私はミユの手を引き、廊下のレストスペースに戻り、ミユと正面から向き合って言った。 「お願いだから、これ以上深入りしないで。ミユまでこの禍に巻き込まれたら、私、希望を失っちゃうかも知れない」  するとミユは憮然とした表情で答えた。 「イヨ! 何、甘えたこと言ってるの。私たちが戦わなきゃ誰がやるの? 警察も学校もだめ。だったら私たち頑張んなきゃ」  本当にミユは強いと思う。どんなことにも覚悟ができているというか。でも見方を変えればそれはミユの弱さでもあると私は思う。  綺麗ごとではすまない現実がある。  どれだけ勇気を出して前に進もうとしても、いざ自分の心や命が危険に晒されると、あっという間に逃げ腰になる。幼いころからの闘病生活で、人間の弱さに嫌と言うほど向き合わされてきた。私には、指先に小さな棘が刺さっただけで夜も眠れなくなる人々の気持ちがよく分かっていた。 . 
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!