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プレゼント
いつも思ってた。
『もしも神様がいたら…』
って…
俺の気持ちが、ほんの少しでいいから届いてくれますように…と。
そして、俺に少しの勇気をもてますように…と。
「起きなさい…あなたの番ですよ」
冷え切った体が、暖かな木漏れ日を浴びに包まれていく感覚に陥った。
目を閉じていてもわかるような眩い光の中、ゆっくりと目を開けると、そこには一際輝く人影とその周りには無数の輝く光が星のように瞬いている。
「ここは…」
俺がぽつりと呟くと、
「そうですね…あなた達の言葉を借りていうなら、天国への入り口ですね」
頭の中に直接、輝く人影から話しかけられているように俺は感じた。
「天…国…?」
という事は、俺は死んだのか?
自分の体があるであろう場所を見ると、透けかかった自分の体があった。
「あの…俺は死んだんですか?」
恐る恐る輝く人影に話しかける。
「ええ。愛する人を事故から守るために、自らを犠牲にして…」
その声は悲観さも哀れみもなく、ただごく普通の会話をするかのようなトーンで聞こえてきた。
「じゃあ、あなたは神様ですか?」
「あなたが私の事を神だと思うなら、私は神でしょうね」
声色はどこまでも優しい。
「やっぱり神様って、死なないと会えないんですね…」
生前、会えてたらお願い、聞いてもらえたのかな…?
俺は自傷ぎみに笑ってしまった。
「あなたの声はちゃんと届いてましたよ。ほんの少しでいいから気持ちが伝わりますように…そして、勇気がもてますように…と。そして、あなたが愛した彼の声も聞こえてきましたよ。愛する人を連れて行かないで下さい。とね」
‼︎
まさか…
まさか‼︎
「本当はあの時死ぬのは彼でした。でも、あなたをこちらの世界に連れてきてしまった。あなたはまだ寿命が沢山あったのに…」
声色は少し悲しげだ。
「でも、俺が死ぬ事であいつは…拓馬は生きていけるんですよね⁉︎」
すがるような気持ちで光を見つめる。
「ええ、あなたが死んだ時から、彼にはあなたの寿命と運命が与えられました。愛する人の死という悲しみを乗り越え、素晴らしい伴侶と出会い、家庭を築き子供を授かり…」
「よかった…」
それを聞いて、嬉しさのあまり流れるはずのない涙が自分の頬をつたうように感じた。
拓馬は生きて、幸せに暮らしている。
それだけで俺は幸せだ…
「でも、本当はそれらはあなたの人生だったんですよ。それでもあなたは『よかった』と言えますか?」
「はい!拓馬を生かしてくださり、神様、本当にありがとうございました」
輝く光に向かって、俺は深々とお辞儀をした。
神様に語りかけていてよかった。
信じてよかった。
「それで…俺はこれからどうすればいいでしょうか?」
「…」
光からのからの返事はない。
「あの…」
「あなたは、まだ彼のことを愛していますか?」
輝く光は俺の声を遮った。
「…はい」
神様の質問の意味がよくわからない。
「そうですか」
光の声は柔らかくなった。
「それでは、あなたにチャンスをあげましょう」
「チャンス…ですか?」
「ええ。もし、運が良ければ、また彼に会えるかもしれません。もしかしたら、彼のそばにいれるかもしれませんし、愛してもらえるかもしれません」
「‼︎」
「でも、彼からの愛があなたの望む愛ではないかもしれない…それでも、あなたはこのチャンスを掴み取りたいですか?」
輝く人影がどんどん近づいてくる。
俺は…俺は…
「それでも俺は、あいつのそばにいたい!いさせて下さい!」
「わかりました。チャンスを与えましょう。でも、忘れないで。このチャンスを生かすも殺すもあなた次第。そこから先の幸せを望むもの望まないもの、あなた次第。私が手伝えるのはここまで…いいですか?」
暖かな光が頭の上に集まる。
「はい」
力強く返事をすると小さな光も達が俺に集まり、
「それではいってらっしゃい。幸せになるのですよ」
全身を暖かな光が覆い尽くしたかと思うと、その光の中に吸い込まれ…
俺はまた意識を手放した。
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