君にとっては当たり前でも

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君にとっては当たり前でも

「ところでさあ」  俺は彼女に『華の高校生リスト』を返しながら訊いた。 「なんで俺のこと好きになってくれたの?」 「え!?」  彼女は収まってきた頬の赤みを急速に取り戻した。 「もうそんな赤裸々なこと訊く!? そういう話ってもっとこう、付き合いも長くなって落ち着いてきた日常のスパイスとしてするんじゃないの!?」 「どこ情報だよそれ。いやまあ、普通に気になっただけなんだけど」 「えぇ、うーん……」  彼女は言い辛そうに「憶えてるかなあ」と言う。 「前にさ、ハンバーガーとポテト奢ってくれたでしょ」 「ああ、あの理不尽なやつな」 「そんな思い出なのね。まあ確かに冤罪だったけどさ」  それはさておき、と星井は続ける。 「あの時、清くんが私に言ってくれたこと憶えてる?」 「……え、なんだっけ?」 「やっぱり憶えてない! あれが今までの私の支えだったのに!」  なんだろう、全然記憶がない。  そんな心を震わす名言を言った記憶はないけれど。 「まあでも清くんにとっては当たり前すぎることだったのかも」  それも素敵だね、と。  そう言って。 「君はね、私にこう言ってくれたんだよ」  彼女はあの時と同じ笑顔を咲かせた。 「――"人はどんな自分を選んでもいいと思うよ"」 (了)
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