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「わからない」
「だよね。説明する」
星井は一回整理するように、深呼吸をした。
「私に『華の高校生リスト』があるのは知ってるよね」
「ああ、あのノートな」
カラフルなシールでいっぱいの、彼女を彼女たらしめている大切なノート。
「そこの一つにあるの。『好きな人に告白する』という項目が」
彼女は言った。
「だから私に告白させてほしい!」
俺はそれを聞いて。
うん、わかった。とは言えなかった。
「いやだ!」
勇気を出して手を震わせながら呼び出して、最後の一滴まで振り絞っていざ告白しようとしたところで急に止められて。
ここまでの俺の覚悟は一体どうなる!?
「交渉決裂か……」
少し悲しそうに、それでも目には闘志を宿して彼女は言った。
「――じゃあ、勝負だね」
「へ?」
俺は面食らって言葉が出てこなかった。
「どっちが先に告白できるか勝負だ、清くん!」
「な……」
びしっと指を差して星井は宣言した。
「いやいや待て待て。これから俺が」
「では家に帰って作戦を練る! さらばだ!」
止めようとする俺の手は届かず、星井は屋上を飛び出していった。
マジかよ。逃げられた……。
呆然とする俺の耳に、周囲の音が戻ってくる。鳥の声がやけに空しく響く。
かくして、俺と彼女の"告白権"の取り合いが幕を開けた。
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