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Who? 1
朝の占い、見忘れた。
正確に言うと、見れなかった。
占いなんて信じるタイプじゃないけれど、自分の星座の順位でテンションが変わってしまうのは仕様もない人間の性だろうか?
会社着いた頃にはそんな事もすっかり忘れてんだけどさ。
「あ~っと!ネクタイネクタイ!」
カバンと携帯を握り締め、準備OKだったハズのオレはサラリーマンの象徴を忘れる所だった。
クールビズにはまだ早すぎる。
「待って、やだぁ、行かないで………」
慌ただしく部屋中を駆け回るオレをよそに、猫なで声がベッドの方から聞こえてくる。
名前も知らない。
さらに言うと野良なのか、飼い猫なのかも。
柔らかそうな肌。艶やかな唇。
思わず引きずり込まれそうになる。
今日が休みなら良かったのに。
けど大事な商談があるんだよ、遅刻する訳にはいかない……。
「アユムぅ、さみしぃ…」
よく鳴く猫。
そして、昨夜オレは自分の名前を名乗っていたらしい。
……思い出せ、樹月 歩。
目を瞑り、まだバッチリ酒が効いているであろう側頭部を拳で叩く。
…あぁー、先輩。
オレまたやっちゃったっぽいです。
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