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Who? 2
…っとこうしちゃいらんねぇ。
クローゼットを開け、ネクタイ掛けから一軍を選び出す。
あったあった。黒のGUCCI。
今日は絶対これ!
決戦は10時………!!
出来たら今回でケリをつけちゃいたいオレ。
この際ジンクスでもお守りでも何でも頼っちゃうよ!
片手でシュルッと取ると、そのままだらしなく開いたワイシャツの襟にかけた。
結んでいる暇などない。
「…ねーぇ、アユムぅ……」
さっきからオレの名前を呼ぶキミは一体誰?
ここまで記憶が無いのはいつぶりだろう。
“…あのさぁ、昨日オレたちヤッちゃった?”
そう尋ねようと彼女の方を向いた瞬間、視界に飛び込んできた光りモノ。
それは、ベッド脇のテーブルでキラキラ輝いていた。
…うっわー。
オレ、腕時計外してる。
これ聞くまでもねぇ、完璧ヤッたわ。
あああああ、またやらかした…。
時間と共に威力を増していく頭痛に思わず頭を押さえる。
柔らかい胸の感触、甘ったるい喘ぎ声、いやらしい蜜の味………
あーーー、少しずつ思い出してきた…。
とにかく愛海には絶対バレないようにしないと……
……って。
もうその必要もねぇのか。
小さくため息を吐き捨てると急いで時計を腕に填め、文字盤を見た。
…残酷にも9時20分を指している。
「だぁ!マジでヤバい!!!あ~っ…と!か、鍵開けっぱなしでいいから!」
男の上でもよく鳴く猫を置いて、オレは慌ててマンションを後にした。
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